原作となったドラマは未見なんだけど、浅田寅ヲが好きなので購入した。
英会話学校の講師としても成功している高野舞のもとに、突然届いた一通の電子メール「あなたのいちばん大切なものなーんだ ひんと すでになくなっています」。それは彼女の一人息子、生の誘拐事件の始まりだった…。
という冒頭シーンからスタートする誘拐ミステリで、サスペンスとしての骨格だけ見ても、誘拐劇に関係者の思惑が入り乱れて進行するストーリー構成と、人質の生命を巡る緊迫感ある演出で相当レベルが高い。
さらにこの作品の面白いところは、誘拐事件を通して、人質の家族だけでなく、人質の同級生の家族、小学校の教師、警察官など事件の関係者の闇の部分がどんどん浮かび上がっていく部分にある。このダ!ークサイドの描き方は容赦がなく、サイコサスペンス的な色合いをこの作品に与えている。物語のラストも衝撃的だ(下巻巻末の対談によるとドラマ版とはちがうらしい)。
そして物語を描く浅田寅ヲの画力も素晴らしい。独特でスタイリッシュな絵柄には、どこか陰があって、全篇にただよう乾いた狂気と親和性が高い。テレビドラマのコミック化ということで、原作を見てない人が敬遠してしまうのはもったいなさすぎる名作。