名だだる料理人も驚嘆するその仕事振りで様々な工夫を凝らし天ぷら界に革命を起こしたとも言われる天ぷら職人、
みかわ是山居主人 早乙女哲也氏を密着ドキュメント、今日を築き上げた知られざる早乙女氏のその性格にも迫る。
一流の職人は、やはり素材にも拘るが、如何にその素材が持つ最高の持味に
仕上げるかは、その人の技術にもよるが、
早乙女氏は日々仕事に対するチェックを怠らない。ちょっとした失敗も反省しその仕事の穴を130歳まで埋め続けると
言う、早乙女氏の言葉が印象的でした。現実的には130歳まで生きる事は不可能であるが恐らく一生と言う意味で60歳
で線を引いたらその先、止まってしまうとも早乙女氏は語る。現役である以上は自身の向上心を忘れないところは、
鮨職人小野二郎氏と似ている。実際、休日にすきやばし次郎に食べに出かけ、小野氏からの影響力も語ってる場面も
あり一流と呼ばれる職人の共通点が浮き彫りにされる。硬いイカのてんぷらが食べれ無い、客に対して食べやすい
ように自ら調理法を工夫し、客を満足させるところもプロフェッショナルな一面です。最後の場面で店が上手くいかず
閉店に追い込まれた親友の料理人に対して、まだ終わっていないと餞(はなむけ)の言葉を自らの仕事振りで見せ
天ぷらを振る舞うところが感動的でした。
インタビュー、対談をそのままの形でまとめており、口語体で書かれている。普段、口語文を読むことなんてほとんどないので、とまどったが、ご主人の生の言葉故に、その人物が全文から溢れ出ている。
一芸に秀でている人同士、相通ずるものがあるとよく言われるが、
本書を読むとまさにその通りなんだなあと頷かされる。
この本は「天ぷら」を通しての人生訓となっている。仕事に対する姿勢というものを教えてくれる。
本書を読むと「みかわ」で食してみたい強い衝動に駆られる。