「2つの問題解決に向けて、限られた時間の中で様々に案を出し、解決を探る」というストーリーにドキドキしながらもページをめくったが、コックピットや地上対策チームの緊張感が読者に伝わりにくい。
もった派手なシチュエーションの
ハリウッド映画を、我々が見慣れてしまったせいか、
キャプテンである著者と乗客でしかない読者との温度差の違いだろうか?
地上での政治的状況をもっと深く書いておれば、より良かったのではないだろうか?
横暴で傲慢な機長、操縦に自信が持てないでいる副操縦士、性格や過去に問題を抱えている
CAたち。空という逃げ場のない空間で次々と起こる事故(事件)にそれぞれが必死に
対処していく姿を描いた航空サスペンスです。
ちなみに、著者は元パイロット。その経験が十二分に生かされていて、
飛行機の操縦シーンや無線のやり取りなどは圧倒的リ
アリティにあふれています。
またコクピットから見たヨーロッパの街や、北の空にひろがるオーロラの描写が息を
のむくらい美しく描かれていて、著者の空への愛着が感じられ素直に感動できました。
ただ、エンジンが炎上するまでに200ページ近くかかっていて、そこまでに行き着くテンポが
遅く大変いらいらしました。エンジン炎上後は、嬉々として筆を執っている著者の様子が
うかぶほどテンポが良くなり、物語りに没頭できましたが、350ページの本書の中で、
半分以上経過しないと物語が本格的に動かないというのはどうかと思います。
あと、エピローグはショックでした。事件中に意識不明で全く操縦桿を握っていなかった
機長2名の処分。乗客の安全や同僚の手当てなど必死に仕事をしたCPのその後…。
飛行機事故の厳しい現実を見せ付けられると同時に、その理不尽さに憤慨もしました。
これが現実なのかと思うと、操縦士も楽じゃないですね。
元ANAパイロットとして数多くのフィクション、ノンフィクションを世に送り出した著者の著作の中で、最も好きな作品です。
代表作「パイロット・イン・コマンド」のような緊急事態に陥るわけでもなく、成田発
ニューヨーク行きのチェック・フライトが淡々と進行します。
若くして-400の機長となった村井、伝説のチェッカーとして恐れられる氏原、大ベテランパイロットの大隈。このコクピットの3人を軸に、静かに話は進みます。
JFK空港の天気は微妙。果たして2年目の新米機長はどう決断するのか。
気がつくとぐいぐいと物語に引き込まれ、まるで自分がジャンプシートに座ってフライトを体験しているようでした。
早すぎる内田氏の死を悼みます。もう少し著作を残してほしかったですね。