面白いこと請け合い。作品の深奥にある文学者の食意識、料理、店との関わり、などなど、さまざまなエピソードとともに紹介されています。
初めから通読するのもよし、好きな作家だけ読むのもよし。一応、参考までに紹介されている文学者を羅列します。
1夏目漱石
2森鴎外
3幸田露伴
4正岡子規
5島崎藤村
6樋口一葉
7泉鏡花
8有島武郎
9与謝野晶子
10永井荷風
11斎藤茂吉
12種田山頭火
13志賀直哉
14高村光太郎
15北原白秋
16石川啄木
17谷崎潤一郎
18萩原朔太郎
19菊池寛
20岡本かの子
21内田百間
22芥川龍之介
23江戸川乱歩
24宮沢賢治
25川端康成
26梶井基次郎
27小林秀雄
28山本周五郎
29林芙美子
30堀辰雄
31坂口安吾
32中原中也
33太宰治
34檀一雄
35深沢七郎
36池波正太郎
37三島由紀夫
最高のエピソードを紹介します。
太宰治は、ある時、熱海に出かけた。東京の内妻に金がなくなったと連絡が入る。頼まれた檀一雄がお金を持って出掛けると、また豪遊。さらに金がなくなり、今度は檀が宿で「人質」となって、太宰が東京に金を工面しに帰る。3日くらいで戻るかと思ったが、10日経っても戻ってこない。仕方なく、監視役をともなって檀が帰京し、太宰を捜すと、のんきに井伏鱒二の家で将棋を指していた。檀曰く、「『走れメロス』はこのことを元にしたのではないか」。
嵐山光三郎「文士の料理店」を読了。作者には文士の食から文士を考察した名著「文人悪食」「文人暴食」がありますが、本書はそれら名著に続く、文士の愛したお店(メニュー)から文士を考察している作品です。本書もモチロン名著。値段も含めて、料理と言い切る作者の着眼点及び文士達の感性に心打たれました。22人の文士の愛した22のお店。全て行きたいけど、地方在住にとっては、なかなか難しい。でも一ヶ所でも訪れて、文士の愛した料理を堪能したいと、純粋に思いました。
パッケージの蓮の花の絵にひかれて購入。画家は南伸坊氏でした。花の俳句について話す嵐山氏の語り口はラジオ深夜便の加賀美さんのようにおだやかで、眠れぬ夜におすすめ。17文字に凝縮された俳句の説明には郷愁と旅ごころがあり、しみじみとしてしまいます。
|