フェリーニの最高傑作のビデオ化作品。ダニーロ・ドナーティの
美術が大きな魅力なのに、どうしてもビデオだと細部が欠けてしまうのが残念ですが、それでも「サティリコン」をビデオで見られるとは何たる幸い。この映画を視て古代
ローマの世界が大好きになつた人も少なくないはず。
キャプシーヌの美しさ、前半のスブーラの場面の素敵な人々、美少年をめぐる青年たちの恋の鞘当て、等々のシーンは息を飲むばかりに素敵です。 まだ見ていない人はすぐにでも、また既に見た人は今一度この傑作を鑑賞して楽しみましょう。
基本的に昔の映画は見ないけど、こればっかりはかなり興味がそそられてしまったので見ました。星5つは、新しもの好きで、基本的に古い映画嫌いって自分にとっては正直
インコレクトだと思うけど、(芸術的に素晴らしいから)って事です。食わず嫌いで放っとくのは勿体無いなかった。確かに。中身、昔の映画だから、どこかたどたどしいのは仕方が無いと思って下さい。それでも、
地中海民族の歴史、性的な嗜好、風俗みたいなものが伝わってきます。ストーリー的にも、始めの内はそれ事体を追う事にはこの際あまり意味が無いと思ったけど、見てたらかなりドラマチックだった。あの時の
地中海にはキリスト教なんて無かったから、神秘主義的でSMで官能的な行為は経済効果をもたらしたのかもしれないけど、人間の本質が浮き彫りになるあんな行為は今ではまずあり得ない。フェリーニがこの映画で描いたのは何を意味していたのか考えさせられた。
ギリシャ神話勉強してる人やファッションなんかやってる人なんかも見たら良いかも。
なんじゃこの始まりは・・・?、と言うのが、第一印象。嘗て、16分冊以上あったと想定されているものの、残ったのは、3分冊の残滓だそうな。始まりも、終わりも、最早不明の果てに消え去ったとの事。何がどうなのやら、良くわからんが、四苦八苦しながら、読み進めるも、やはり、良く判らん。無頼(と言い切るべきか・・・)の若者の、無頼の生活が、だらだら、綴られているだけの模様。ストーリを追っても、面白いとは思えない。少々、暗い、B級ロードムービと考えれば、まあ、そんなもんかなと。
しかし、約2000年前に、B級ロードムービがあったことが面白い。爛熟が爛熟を生んだ、当時の
ローマでは、特に、宮廷では、勧善懲悪とか、倫理とか、お笑いとか、恋愛や、悲喜劇等の、普通の楽しみが、もうあまりにつまらないものに思えたのかもしれない。この作者は、ネロの審美に関するご意見番だったのだから、何か目新しいものを、下品、不潔、猥雑、姑息等の、美的では無い部分に、擬悪の中に、「美」を求めたのかもしれない。その意味では、60年代から70年代の、ヌーヴェルバーグを想起させる。
フェリー二です。奇抜です。醜いです。しかし圧倒されます。
古代
ローマを舞台にエンコルピオという青年の冒険を通して描かれる、赤裸々な欲望と肉欲と奔放と空しさの絵巻。どこからともなく湧き出てくる快楽を求める人々のデカダンス炸裂の描写が凄まじい。インドのバラモン教的絵画、
バリ島の伝統舞踊ケチャックダンスの合唱、古代西アジア的儀礼、アフリカの民族音楽の使用など、西欧文化にこだわらず古代的なものや前近代的なものをすべてミックスした異郷の香りふんぷんたる雰囲気作りとそれにまつわる創意工夫が面白い。
ビスタサイズの大画面をあますところなく使いきり、それぞれのシーンが完璧にフレーミングされている画面構成はどこを切り取っても絵画的に完成度が高いところはさすが映像の申し子フェリーニ。また、随所に配された、太りきった人々、ならびに身体的な特徴が際立った人々の登場がフェリーニが愛した人の世の多様性をいやがうえでもかもし出し、これが作家の映画であることをことさら強調します。
あえて難を言えば、演技に特筆すべきところが無かったこと、全体のストーリーにもう少しなめらかな連動性がほしかったところが挙げられるでしょうか。こうしたあたりが強化されていればさらに優れた作家的抒事詩に成りえたのではないかと思える作品です。
演技の巧みさやストーリーを堪能するのではなく、あふれ出てくるエネルギーを浴び、映像の魔術に圧倒される作品としては記憶に残る一本です。