私は007シリーズの中でこのゴールドフィンガーが一番好きです。ボンドと車がとてもよい絶妙な作品だと思いました。このゴールド・フィンガーでは悪役までもが可愛く見えてしまって、スパイ映画と言う感じはしないのですが、このシリーズの代表作としては一番にしてもいいのではないかと思います。全身ゴールドの遺体もこの映画ならではですね。
この原作が発表されたのは1959年だから半世紀近く前だが、今読み返しても充分面白い。その面白さは、現在主流の無駄を排した小説には求められない当時のヨーロッパの優雅さにある。優雅といってもアクションものなので締めるところは締めるし緊迫感もあるが、ストーリーの端々に散りばめられた著者の教養が、単なるアクション物以上の格調の高さを醸し出している。それは例えばアストンマーチンに乗るボンドが、前でのろのろ運転をしているファミリー・サルーンの運転手を、「向こうの車のハンドルを握っているのは、下手な運転手にお定まりのバッジみたいに、帽子をまっすぐ深々とかぶった男」と描写したり、プッシー・ギャロアを「同性愛の美しい女のもつ、男の色気をそそるような挑戦を感じた」と表現するところに現れている。このように映画では描かれていない言い得て妙の表現があちこちにある。
アクションものの小説はたくさんあるが,ボンド・シリーズほど主人公の知性を感じさせるものは少ないのでなかろうか。
これは「ミステリ」の範疇に入るようだが,「アクション」といった表現の方が合うほど清々しい。私はまだ原書を読んでないが,井上一夫の訳もこなれていて、翻訳モノにたまにある違和感は感じなかった。
リニューアルされた「ゴールドフィンガー」は、本編を再生した途端に旧版との違いが分かるほど、画質が大幅に向上しました。画面のノイズが低減されただけでなく、画質自体も鮮明です。マイアミビーチの抜けるような青い空や、プールの水の透明感は、まるで新作映画を観ているかのようでした。個人的には、旧版の画質やモノラル音声も、60年代らしい味を感じさせたので捨てがたく思いますが、以前の画質に不満をお持ちだった方でも、これは満足できる新バージョンなのではないかと思われます。
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英語のモノラル音声は、この版においてもメニューから選択できます。)
日本語吹き替えは、他の方もご指摘のとおり、テレビ放送版では“よろず屋”に変えられていた“オッドジョブ”の名が、このDVDでオリジナルに戻されました。ゲームソフトのおかげで、最近は子供たちもオッドジョブの名をよく知っていますので、名前を元に戻すことにより、この作品が子供たちにとっても更に親しみやすくなったのではないかと思われます。
ただし、これは最近発売された多くのDVDにも言えることですが、ケースの造りが旧版と比べ、少々繊細になったのではないかと思われます。私が持っている旧版(GXBA-16178)は、ケースも盤面も、もっと頑丈な造りになっていました。とは言え、これは作品の本質とは何ら関係のないことですから、私の大好きな「ゴールドフィンガー」を、これほどまでの高品質で発売して下さったメーカーの皆様の努力に、強く感謝したいと思います。