1987から89年にかけて、デヴィッド・リーンは、”世紀の大作”アラビアのロレンスの復元作業を行った。このCDは、復元されたアラビアのロレンスのサウンド・トラック盤である。最初のサントラも名盤中の名盤と言えるが、音楽を担当したモーリス・ジャールは、さらにスケールアップさせている。9が、新たに挿入された曲である。今回は、モーリス・ジャール自身が指揮し、
ロンドン・フィル・ハーモニック・オーケストラが演奏している。アナログで録音しデジタル・リマスタリングして復元された音楽。これは値打ちのある作品だと思う。
「アラビアのロレンス」の保存版として購入した。家のテレビは4Kではないのに再生映像のカラーが鮮やか。気のせいかと思ったが見直しても同じ感想だった。今のところ「アラビアのロレンス」の最高映像版のディスクと思う。高ビットレートでの
エンコードでブルーレイ2枚組。日英字幕のほか日本語吹き替え選択可能。付録無し。
誰えも体験し得ない事実を書物に記す難しさを知る一冊。この分量では、読んでも読んでも、その心労のを伺うには少なく、かつ知りもしない行程を推察するには資料も欠ける。こうした個人が、戦争の裏側に存在したと知りえるだけでも僥倖か? 詳細を知るには東洋文庫版も捨てがたいが、珠玉のエッセンスを感じるには、この文庫に一日の長あり。イギリス人にもかかわらず、キリスト教概念に縛られすぎないロレンスの懐の深さが、そこかしこに感じられる。肥沃な三日月地帯の民よ、諍いよりも感謝の生活に興味はないのか。
この映画の魅力はさまざま語られてますが、見逃せないのがその隠喩性。
まずは3回でてくるオートバイ。最初はロレンスを死に導き、中盤では
「Who are you?」と問いかけ、ラストは未来を暗示して去っていきます。
「Who are you?」の問いも3回ロレンスに投げかけられ、その度に彼の答えは変わります。
1度目は「イギリス人」、2度目は「ファイサル王子の友人」、そして3度目は
上記中盤のスエズ対岸のオートバイ兵士からの問いかけに対してで、この時は無言です。返答不能になってます。
ほかにも整然と行進するイギリス兵の足にオーバーラップする、バラバラの
ラクダの足や、
マッチの火を手で消すこと、砂漠に踊る影などなど、映像に映っている事がら以上のことを伝えてきます。
ツリー状の規律の近代国家イギリスと地下茎状のアラブ、国家と個人、精神と肉体、意志と運命、
都市と砂漠、白と黒、善と悪、虚像と実像、そして戦争と人間、様々な二項要素を用意しながら、
ロレンスという個人のアイデンティティーをあぶりだしていきます。「Who are you?」と。
いい映画とはそういうものともいえるでしょうが、私はこの映画以上に
そのような隠喩性、象徴性を感じる映画はなく、50を過ぎた今でもベスト1の作品です!