カタストロフィ後、人類は僅かに文明の痕跡を残したコロニーに散在、少ない物資を巡って小競り合いを繰り返していた。
貴重な新コロニー候補地の情報が隠されていると言う噂がたった、アンド
ロイド・
アリスを連れて、廃墟に立て篭もったトラウマ塗れの天才少年スナイパー、シュウと、出身コロニーでの信頼を失い、
アリスの持つ秘密に起死回生を賭けたカリスマ少年ケンジ率いる武装少年兵中隊との最終戦が始まる。
構造的には近未来デストピア物『フリージア』と非常に良く似ていた本作、やはり最後は病んだ主人公とライバル陣営の殲滅戦となってしまった。
通常だったら充分スリリングでカタルシスを伴う戦闘描写も、一読者としてはどちらも生き延びて欲しいと思っていただけに身を切られる様に辛い闘いだった。
それにしても緊張感が伴う展開中に悪意の様に漫画やアニメ、角川映画の台詞やバンド・四人囃子の歌詞が挿入されるのには困惑させられたが、その最悪のタイミングで発せられている筈の言葉に妙に感動してしまう場面も。
ただ、ラストは主人公が幽鬼となって彷徨う『フリージア』より悲惨な環境を設定していたにも関わらず、僅かに斟酌が加えられている気もした。
その辺りは執筆中に3.11を体験した作者のあとがきでも触れられて居る。
特に女性陣の描き方に救いが有る。
しかし、
タイトルロールの
アリスは果たして?
やや強い既視感は有る物の、松本氏が唯一無比の悪意すれすれの個性で病んだ終末世界のその先を描こうとした意欲作。
松本氏ファンの方にはお薦め。