多くの酷評にかえって興味がわき、どれ程のものかと試しにプレイしてみたところ、これがまた思いの外楽しめた。 確かにグラフィックのクオリティーはお世辞にも良いとは言えない。ゲーム機が格段の進化を遂げたこのご時世だからこそ、余計にそう感じてしまうのかもしれない。まぁSFCならこんなものだと思う。逆に古めかしいところがまた懐かしさを感じさせてくれたりもして、良く言えばゲーム本来の楽しさというものが純粋に味わえる。
このイース4は、SFCとPCエンジンで発売されたが、SFC版は全体的に演出が地味め。一方のPCエンジン版は、アレンジがきつすぎてイースファンにはかなり違和感がある作品となっているようだ。私はPCエンジン版はプレイしていないので両者を比較した感想は言えないが、SFC版に限って言えば、(グラフィックはさておき)なかなかの快作だと思う。 なによりシナリオがいい。
原案はファルコムだが制作したのはトンキンハウスで、過度のアレンジを一切排除した地味めな演出は、おそらく原案により近い作品を目指そうとした結果なのだと思う。その証拠に、このSFC版イース4はイースI&IIの流れを汲んで、雰囲気や世界観が忠実に再現されている。現に私はストーリーが進むにつれて、いつの間にかグラフィックのショボさすらも気にならないほどにこのゲームに引き込まれていた。懐かしい街や村に、見覚えのあるキャラたちも沢山登場し、半キャラずらしも健在だ。加えて、魔法剣の装備によってボス戦時でも複数回の回復が可能というのが何げに有難い。 とにかく、まさにイースの世界そのもの。やっぱりイースはいい!…そう思った時点で、このイース4はファルコム製ではないにしろイースシリーズに名を連ねる一つの作品として見事に成立していると私は思う。
そもそもこのイース4は、4作目でありながらストーリーとしてはイースIIのエンディング直後から始まるいわゆる続編となっており、このイース4があってこそ、アドルのイースにまつわる一連の冒険がようやく完結するのである。つまりこのイース4は、ストーリーの流れ的にはIIとIII(ワンダラーズフロムイース)の間に位置付けされるものであり、たとえどんなにイースファンの間で評判が低かろうが、やはりイースシリーズから切り離してはならない作品なのである。
とにもかくにも、私個人としては満足のいく作品だった。 半日あればサクッとクリア出来るお手軽さ+レトロ感たっぷりのイースを堪能したい!という方にはお勧め。 とりあえずやってみて損はないと思う
本作については心無い中傷めいた感想が多く心を痛めているイースファンです。
自分はスーパーファミコン、PCエンジン、ノベライズ版、コミックス版とすべてのイース4を知っていますが(さらに二つのゲーム版は20〜30回プレイしています)、このプレイステーション2版の良いところは、何と言ってもストーリーでしょう。これについてはすべてのイース4の中でこのプレイステーション2版が最高、と言えます。
そもそも、1993年に発売されたPCエンジン、スーパーファミコンのイース4は当時のファンに向けたファンサービス色が非常に強いもので、そのためにイース1・2の味わいを損ねる点も多々ありました。(PCエンジン版の某
魔術師の設定や某二人の再登場など。)
プレイステーション2版はさすがに10年以上を経過したこともあり、ファンサービス色は払拭され、セルセタの樹海を舞台にした新しい物語として手堅く再構成されています。ストーリーにしっかりしたテーマを持たせ、バックグラウンドの無いシリーズでいちばん浅薄な悪役だった闇の一族にスポットをあてて人間的な深みを描き出すことに成功しており、古代都市と太陽の
仮面をはじめとする基本設定は、従来作よりもいっそう作りこまれた説得力のあるものになりました。
しかしながら、優れたストーリーも具体的な脚本やゲーム演出への落としこみには失敗しており、ストーリーに深く関わらない町の住人などの台詞はきわめて凡庸で生活観がありませんし(メインキャラたちの台詞は出色なのですが)、イベントシーンのつなぎは不自然であったり唐突であったりしました。
ゲーム性の面では意欲的な試みも多いものの、煩雑になりすぎた魔法システム、雑魚敵が強すぎてボスが弱すぎるゲームバランスの破綻、単調で広いダンジョンマップ、ダンジョンでのセーブ不可(セーブポイントなし)など、残念ながら2005年の作品として及第点といえる水準にはありません。
ストーリー、より限定するなら基本設定やメインとなるプロットこそすばらしいものの、ゲーム全体としては平均ないしはそれ以下にとどまった「惜しい」作品だと思います。
とはいえ、シリーズのファンが「イース4」の物語を味わいたいなら、ぜひこのプレイステーション2版を手にとってみてください。そこには必ず新しい発見と感動があります。
爽快なアクションRPGとしてのイースを求めるなら、残念ながら楽しい体験にはならないかもしれません。
最後に。本作のBGMはすばらしいです。非常にファンサービス的ですが、過去に発売されたPCエンジン版、スーパーファミコン版、アレンジCDなどから代表的なエッセンス(アレンジで追加されたアルペジオやシンセによる特徴的な音色など)をふんだんに盛り込み、かつ内蔵音源による演奏としてはクオリティも高く、ゲーム中での演出効果は高い。
過去作を深く知っている人間ほどニヤリとさせられるでしょう。