ハリウッド・メルローズ通り沿いにあるパラマウントスタジオの正面から見て右側の門を「スワンソンゲート」という。これは本作でノーマ・デズモンド役のグロリア・スワンソンがスタジオ入りするシーンをここで撮ったことからつけられたものだ。1930年代に「フリークス」というトッド・ブラウニングの大問題作があったが、ビリー・ワイルダーは本作で
ハリウッド版「フリークス」を作り上げた。まともな登場人物は誰も出てこない。ウィリアム・ホールデンは唯一まともな語り部だが、冒頭から殺されてるし・・・。サイレント映画へのノスタルジーというよりも、それらの時代を亡霊のように描いたワイルダーの手腕はやはりすごい。チャッ
プリンと並び称される
バスター・キートンも亡霊のひとりとして登場している。だが何といっても凄いのは、スワンソンの鬼気迫る演技だろう。怪俳優・シュトロハイムもかすんでしまう迫力はさすがである。ちなみに、いまパラマウントスタジオを訪問すると、その広さに驚くと思うが、本作の撮影当時は半分の規模しかなかった。半分はRKOスタジオであった。その証拠にまだRKOのロゴマークである地球マークがまだそのまま残されている。スタジオツアーに申し込むと、正確にどこからがRKOの敷地だったかがよくわかる。このスタジオの裏手は
ハリウッド墓地になっているが、そもそもこのスタジオ用地も墓地だったところをパラマウントとロバートソン・コール(RKOの前身)が買い上げたものだ。サイレントの亡霊(生霊)を撮るのにはもってこいの場所だったのかもしれない。作品は大・大・大傑作である。
武芸がからきし駄目な主人公が、大富豪の祖父の財力で同心にさせられ、偶然事件を解決したことから、まわりの人々が「切れ者」「剣客同心」だと畏れ入ってしまうという、無茶で痛快な設定のシリーズです。顔がよく、気前がよく、推理力はあるものの、武家の常識にうとく、本当にこわい目にあうと立ったまま、目をむいて失神してしまう卯之吉を、たいこもちや美貌の男装の女剣士や侠気のある親分が支えます。
「駄目な」卯之吉の天然ぶりに、悪党や頭の固い武家たちが深読みをして、誤解のあまり、みずから墓穴を掘ってしまうところが何とも笑えます。
このへんがまじめな時代小説のパロディで、たまりません。
それにしても、吉原の最高の太夫はじめ、無能な彼を守ってあげたい、と押しかける美女剣士など、どうして、というぐらい女性にはモテるのも不思議。
作者が男性であるためか、むしろこのヒロインたちの魅力がくっきりしています。
このお話は続きが来月にまたがるので、半分です。卯之吉の「ほんとうに駄目な部分」がこれでもか、これでもかと暴露されて、鼻白むところもありますが、お化けやお芝居が絡む、夏らしい趣向になっています。
シリーズ六冊目、そろそろヒーロー卯之吉の本領と本腰も見せてもらいたいところです。