「位どり」という視点で、自分を如何に上げる(優位に立つ)のか、小細工に優れた待遇表現の体系を持つ方言としての京都弁の分析をしている。
分析といっても1編が3ページ。題材が次の章立てに流れるようにつながっているのだから、たいしたものだ。 悪口だけでここまで微妙な差異と使い分けが生まれ、体系立っているのだから。
後段の方で出てくる京都弁訳の「源氏物語」「枕草子」などは秀逸。 語彙やアクセント、発音、文法、表記は変遷を遂げても、言葉を話す人間が伝えてきた精神性が、現代京都弁に直してもにじむのがおもしろい。 名著「全国アホバカ分布考」で指摘していたように、悪口の流行の最先端地・京都というのは実に奥深いものである。
からだを使った慣用句が、日本語には手に余るほどある。
無意識にそれらのことばを使っているが、反省してみるとなかなかおもしろい。
内容は、品のいいエッセイである。
たとえば、最初の序章の一節、
「じょうず」なら人の「うわて」に出て「かみて」を占め、「じょうて」の結果を作り「じょうず」と敬意を払われる。
全部「上手」なのだ。
ラーメンズのコントのように、言語生活を豊かにするのに、いい一冊だ。
かねてから「源氏物語の史跡を訪ねて」
というような企画を目にする機会は多かったのだが、
この本が出版されたのは2008年。
「源氏物語千年紀」だったことが
たぶんに影響しているのだろうなと思う。
中はオールカラー。
各帖にちなんだ場所とあらすじが紹介されており、
時代背景や当時の風俗についても触れられている。
同じ2008年に出版された
『瀬戸内寂聴さんと行く 「源氏物語」こころの旅』もいいと思う。
甲乙つけがたく、さんざん迷ったあげく
寂聴さんの訳および、解釈が好みではない
ということで『源氏物語を歩く』を選んだ。
読みやすさ、とっつきやすさという点では
寂聴さんの本に軍配が上がると思う。
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