10年以上の年月を経ての期間限定再結成を果たした彼らの記録としては決定版と言っていいだろう。
ご当地デンマークでのコンサート全編を収めたCDと同内容のDVDは、文句無し。 やや観客の歓声がオフなので熱狂感が伝わってこない気もするが、演奏、ミキシングともに最高だし、もともとキメの多い楽曲だがライヴでは70年代的なアドリヴも披露してくれる、あの空気感もまるまる昔のままだ。
しかし、私が最も価値を置くのは、1時間を超えるドキュメンタリーだ。 90年代の懐かしい映像、プライベート映像もいっぱい、そして現在のメンバーインタビューもいっぱい。そしてそこで語られ明らかにされるのが、彼らが如何に成功し、人間関係を悪化させ、崩壊し、和解したか。 それも赤裸々としか言いようがない、淡々とした口調で語られるからこそ、ロック・ミュージシャン、それも20歳代の若者が一夜にして成功を手にしてしまった時に起こる様々な現実を突き付けてくる。
メンバーの不和の原因がビートルズだったなんてショックだったし、伝説のデビューアルバムは、ドラムとベースを録音した後、ティムが延々とサウンドやボーカルを工夫して完成させた、実質的なティムのアルバムだったこと、メンバーの不和が無くても2作目『ローテイター』アルバムのセールスは不振で、コンサート動員も厳しいものだったことなども明らかになっている。
ある日、メンバーやスタッフと夕食をとっている最中にティムの精神が崩壊して泣き崩れてしまった場面など、まさにビーチ・ボーイズにおいてその悩みを分って貰えず精神に異常をきたしたブアイアン・ウィルソンの悲劇を思い出させて悲痛だ。
彼らの再結成は、だから期間限定なのだろう。
「僕達は重なるところはほとんどない。でも、その少し重なっているところが、とても深いんだ」
ティムの言葉が、彼らの現実を物語っているようにおもう。
1994年、DIZZY MIZZ LIZZYの1stアルバムです。
DIZZY MIZZ LIZZYは、デンマーク出身のハードロック・バンドです。 メンバーは、 Tim Christensen (G & Vo), Martin Nielsen (B), Soren Friis (Dr) のトリオ編成です。
バンド名は、THE BEATLESの"Dizzy Miss Lizzie"という曲のタイトルに由来します。 BEATLESの影響を強く受けたフックのあるメロディーと、北欧特有の湿り気・憂いが、見事に融合しています。 「うつ病のBEATLES」ってところでしょうか。
サウンドは、トリオ編成ですが、演奏力が素晴らしいため、逆に厚みが感じられます。 割と、低予算、安い楽器で作られたサウンドですが、 その分、変な飾りが少なく、バンドの演奏力・腕の素晴らしさが目立つアルバムです。
DIZZY MIZZ LIZZYの良さは、聴くほどに増していきます。 1回、ラジオで聴いて「いいかな〜?」 数回、ラジオで聴いて「結構いいかも? 気になるから買ってみようかな?」 CDを買って10回も聴けば、見事に「Dizzyのとりこ」になってしまう! 。。。そんな、中毒性のあるバンドです。
「90'sハードロック・ファン」には知られた存在ですが、それでも「至宝の大名盤」! 「若いハードロック・ファン」「他ジャンルのファン」etcの知らない人にとっては、かなりの「秘宝盤」です! ジャンルにとらわれず、あらゆるタイプの「音楽ファン」にオススメです! (中古盤・激安です。。。が、決して「使い捨て音楽」ではありません)
(参考) 日本盤は、ボーナストラック「Hurry Hurry」収録。
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