ピアニスト館野さんの存在を知ったのはNHK・TVを通してでした。その中で館野さんが「左手のピアニストというのではなく、左手のみの演奏だからこそ表現できる演奏がある・・・」ということを淡々と語っておられたのが印象強く心に残ってます。私の目から鱗が落ちた瞬間でもありました。私事で恐縮ですが若い頃からの趣味でクラシックギターをカジッッテきたこともありバッハ「シャコンヌ」は特に関心がありましたが、館野さんのピアノによる「シャコンヌ」を聴いてた瞬間、こんなに味わい深く、訴えてくるシャコンヌは初めてでした。また、アベ・マリア(カッシーニ作曲)はとにかく暖かく、優しく語りかけてくるような演奏に癒されています。仕事柄(牧師)結婚式場の司式もしていますが、その度にこのカッシーニ作曲のアベ・マリアを聞きます。しかし、いわゆる綺麗に人様に聞かせる演奏とか、演奏テクニックが云々・・・という世界とは異なる、素晴らしい演奏です。個人的な感想ですが、乾いた砂に水がしみ込むように、私の心に入ってきた館野さんのアベ・マリアでした。HQCDによるディスクでの発売も「大正解」であったと書き添えておきます。
とりわけノクターン調の「夜の海辺にて」と、安らぎに満ちた「前奏曲」が中等度者向けで良いと思います。骨太ドラマチック路線の曲として「パンカコスキ~激流」も収録されています。同じ曲目のCDも販売されているので、併せて購入されると良いでしょう。
子供にはちょっとよさがわからないかもしれません。同じ難易度ならショパンを選ぶでしょうし。ピアノ中級程度の学習者には是非「樅の木」は弾いて欲しいですが、なかなか取り上げる機会がありません。発表会の候補曲に時々入れるのですが、誰も選んでくれません(涙)。日本人は本当にごく一部の作曲家しか知らないんだって実感します。まだまだ世界中には私たちの知らない名曲がたくさんあるんですね。誰も選曲してくれないから、そのうち私が講師演奏で弾こうかな。
そもそも、私自身が北欧系の作曲家というとグリーグくらいしか弾かずにいました。
樅の木を初めて聞いたときの感動は今でも忘れません。最近の名曲集には時々「樅の木」が入っていますが、私の子供の頃には出会えませんでしたから。
シベリウスはオケの曲がたくさんあるし良く知っている作曲家ですが、こんな素敵なピアノ曲を書いていたなんてずっと知りませんでした。
メリカント、メラルティンといった日本ではマイナーな作曲家も、舘野さん無しには知ることが無かったと思います。
ショパンともドビュッシーとも違う、北欧独特の空気感というか、済んだ音色がとても素敵です。このCDに対応した楽譜が出版されているので早速買って弾いています。
外国人の有名ピアニストの演奏ばかり聞きがちですが、舘野氏が右手を失う前に是非生で聞いておきたかった。こんなにすばらしい演奏家とは知りませんでした。
脳梗塞で右手の自由を失った「左手のピアニスト」舘野泉のエッセイ。
この人の音楽は、左手だから素晴らしいのではない。 五本の指で弾こうが、十本で弾こうが、二十本で弾こうが、鼻で弾こうが、そんなことはどうでもいいのだ。 普通の人ではできないことをなしとげた苦労も、まるで三人が弾いているかのような素晴らしい調べがただたった一つの手から紡ぎだされていることも、もちろん賞賛に値するが、何よりも素晴らしいのはこの人の音楽への情熱、だろう。
もし万が一この人がまた左手を失い、言葉も失い、表現するという手段を一切奪われたとしても、彼が音楽をかつてこのように思っていたというその一点のみで、彼は永遠の音楽家たりうる。
これが左手だけで弾かれているなんて、とても信じられません。ことにバッハはすごい。 倒れられる前より、さらに音楽の世界を広げられたと思います。 訳もなく、涙が湧いてきて、そして、力が湧きあがる、そんな演奏です。
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