確かにレイバーや第二小隊の面々の活躍が少なく、物足りなさを感じなくもなかったですが、緊迫したシナリオと後藤、南雲の魅力は十二分でこれはこれですばらしいものです。残念だと思うのは、様々な社会問題を扱ってきながらも前向きで生産的な方向で先に進んできたパトレイバーの持ち味がこの作品にはないということ、二課キャラが変わったように見えるがどこに向かうのか判断するには情報が足りず、愛着を持って追ってきたものであるだけに消化不良感がただ事でないこと。ほとんど終末感すら漂う雰囲気で、観終わった後には何か悲しみすらありました。 戦争はいつでも非現実的だと作中でキャラが言いますが、それは惨劇にリアリティを感じない制作者の節回しのうちだと思いますが、パトレイバーのありかたは、たとえばコミックスの最終番でバドど相対した野明が彼に言った台詞が示していると思います。 絵も音も綺麗だし、カットの迫力も凄いし、エンターテイメント作品としては大成功。今観ても古くないです。
前2作が好評だったため、あーるの世界を充分に堪能してもらおうと企画されたドラマアルバムのリマスター盤。構成としては、ドラマ2本とショートバージョンのイメージソング2曲、カバー1曲、新曲1曲で、トータルタイムは30分足らず。相変わらずの短さ、これも「あーる」の特徴である。
しかし、中身は濃い。声優陣は前2作のメンバーがほぼそのまま移行。しかも西園寺えりか役はあの高田明美先生である。個人的な見解として、えりか役はこの後のCDやビデオ(DVD)でのかないみかさんより高田先生の方がマッチしていると思われる。「高田えりか」は本CDと前2作のみ、さらにつっこむとドラマは本作と音楽集Vol.2のみなので、たっぷりと堪能するには本作が最適である。さらに、ドラマパートの脚本は、高田先生の夫君である名ライターの伊藤和典先生。原作の持つ「すっとこどっこい」な雰囲気を全く違和感なく作り出している。何でこんなに話が前に進まないんだろうと笑いながら聞くのが正しい「あーる」鑑賞法。ま、とにかく聞いて笑ってください。近年のアニメにはない高いクオリティのオーディオドラマが楽しめます。あえて問題点を挙げるとすれば、笠原弘子さんが試験勉強のため別録りになってること(微妙に空気感がずれてるのがわかる)。とはいえ、それも、時間の短いことも気にならない楽しいアルバムである。
あーるのオーディオドラマはVol.2、本盤、真夏の一夜漬、ボックスに収録されているが、原作の雰囲気を忠実に再現しているのはなんといっても本盤である(故に「どらまSPECIAL」なんだけどね)。そういう理由であーる関連のCDの最高傑作と考えられる。何より、原作者のゆうきまさみ先生が関与しているのは本盤までなのでいわば最後のお墨付きアルバムなのだ(後2作のドラマはビデオの発売とリンクしているので、ちょっと毛色が違うしね)。気楽に(そもそも力を入れて聞こうとしてもできない内容である)楽しく聞いて、めくるめる「あーるの世界」をご堪能ください。
・・・などとあ〜るくん文体で書いていたらきりがないので、元に戻す。
それにしても、元々ワーナーから出ていたこのCDをコロムビアがリマスターして、再発したのは画期的なこと!殊にこのVol.1は初版盤の音圧が低く、これに続くVol.2、ドラマ編、「真夏の一夜漬け」、R-BOXと並べて聴くと、急にパワーダウンして困っていた。しかし、今回の英断でその心配が無くなった(同時リマスターされたVol.2も音量が上がっていると元も子もないが・・・)。とにかく素晴らしい、パチパチ。
「究極超人あ〜る」は作者のゆうきまさみ氏自らが「アニメにするよりCD=オーディオドラマの方が面白い」と断言しただけあり(今回復刻されなかった初版のライナーノートにその記述がある)、後に作られたOVA作品(現在DVDで発売中)よりも「あ〜るの世界」がきちんと描かれているし、そのはちゃめちゃ加減が何より面白い。
よって、この機会を逃すな!一度聞いたら二度と抜け出せないめくるめく「まぬけな世界」があなたを待っている。もちろん同時発売のVol.2も併せて買うべし!
私は、「OUT」の頃からゆうき氏のファンで、「ヤマトタケル」等初期単行本を持っていたんですが、阪神淡路大震災でコレクションの大半が灰になったか、親戚の倉庫で埃をかぶりっ放しという状況です。 だから、この本と、初期作品を集めた単行本が、30年記念で出されて、とても助かりました。
昭和から平成、20世紀から21世紀へと移り変わる間、震災や火事で、大切なコレクションを失った人間は多いです。そして、それらを買い直すのは、保管場所、金銭的余裕等から、とても難しい。
だから、こういう「まとめ」本は貴重です。 これ1冊でとても懐かしい気分に浸れます。是非、手元に置いておきましょう。
ゆうき氏がコミック連載初期に月刊ニュータイプで描いた、アニメ(アーリーデイズ)設定のエピソード。小学舘発行の劇場版第1作ムックに再録され、後にTVシリーズで映像化。連載後期のシリアス展開と異なり、パトレイバーが一種のパロディを目指していたことが窺える一品です。
|