この本を読んでいると、最近の宇宙論は、昔と比べると、随分進歩したものだと思う。この本では、冒頭の「はじめに」から、暗黒物質や暗黒エネルギーについて、非常に興味深いことが語られているのだが、私が「ホーキング、宇宙を語る」などで宇宙論をかじった頃には、暗黒物質は、宇宙が膨張し続けるのか、収縮に転ずるのかの鍵を握る物質程度にしか語られていなかったし、暗黒エネルギーに至っては、その存在さえ知られていなかったのだ。今年発売された本でも、こうした昔の本と五十歩百歩の内容のものがあるくらいなので、本書は、最新の宇宙論を知るには、最適な本だと思う。
さらに特筆すべきは、それが、平易な語り口で、非常に読み易く、分かり易く書かれているということだ。著者、村山斉氏の略歴を見てみると、素粒子理論におけるリーダーだそうなのだが、難解で哲学的なホーキングの本と比べると、えらい違いだと思った。村山斉氏は、宇宙論の素人のレベルがどれくらいなのかをよくわかってくれており、そのレベルまで下りてきて、本当に優しく解説してくれているのだ。
私も、昔と最近を合わせると、何冊も宇宙論の入門書を読んできたのだが、これほど読み易く、分かり易い入門書に出会ったのは、初めてだった。巻末の「おわりに」を読むと、この本は、村山斉氏の四つの独立した講演をテープから起こして、科学ライターの荒舩良孝氏がまとめたのだそうだ。もちろん、講演自体が非常に分かり易いものであっただろうことは事実としても、村山斉氏もその筆力に感謝しているとおり、単純に講演の内容を紙に起こすだけの作業ではなかったはずであり、本来は難解のはずの最新の宇宙論を、これだけ分かり易くまとめ上げた荒舩良孝氏の才能も、称賛されて然るべきだと思う。
新聞広告で絶賛されていたので手に取ってみた。
確かに難しいと敬遠しがちな素粒子論と宇宙論がよくわかる。いや、わかった気になる、というのが本当だろう。後半の議論、対称性の破れだとか、超ひも理論、大統一理論などはやっぱりほとんどわからない。が、それでも本書が「よくわかる」のは、物理学者が何を知りたがっているのか、「謎」が何なのかを素人にもわかるように説明してくれているからだと思う。
宇宙の95%は正体のわからない暗黒物質と暗黒エネルギーで満たされている、原子なんて5%しかない、という。なぜ、物理学者はそんな『妄想』を抱くのか。その理由がわかる。
そしてもうひとつ。原子よりもずっと小さな素粒子の存在も、理論だけでなくて、ひとつひとつ最後はちゃんと実験で確かめていることがわかる。もちろん、規模もレベルも全く違うが、実験で確かめる、という点では小中学校の理科と同じだ。そこがわかるのがとても大きい。
入門書というよりも啓蒙書だろう。ここから先はとんでもなく専門的になりそうで、中高年の科学好きレベルではとても先には進めそうもない。が、中高生の科学好きにはぜひ読んでもらいたいと思う。こういう本こそが20年後の日本を救うのかもしれない。
2011年のノーベル物理学賞の対象分野となったダークエネルギーについて第1部では理論的側面を解説し、後半の第2部では天体観測によるダークエネルギー測定方法について、全般的にわかりやすく具体的に解説されている。例えば実際の宇宙で観察されているダークエネルギーの量が、素朴な量子論的真空エネルギーから予想される量よりも120桁以上も小さいという不自然さについては第1部の章一つを費やして平易に説明されており、また第2部では図や写真がふんだんに掲載され、実際の天体観測方法を理解し、想像することができる。知的満足度も高く、ダークエネルギーに興味のある人にとってはお勧めできる。
宇宙の事を書いてこれだけ読ませる本も少ないと思います。 2時間もかからずに読了出来ますが大事な点、重要な点は 全て網羅しているのではないかと思うのでここからさらに 詳しく説明している本に進んでいけばいいと思います。
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