全体のバランス、塗装の具合などは、良いのだが、主脚確認棒など、細かいディテールが省略されている事が残念。
整備困難な三式戦闘機の液冷エンジンを急遽空冷エンジンに換装して誕生したという、ユニークな経緯を持つ機体。液冷エンジン機の細い胴体に零戦より大直径の空冷エンジンを搭載した姿には独特の魅力があります。 そんな実機に肖った訳でもないでしょうが、本キットも同メーカーから先に発売された「三式戦闘機 飛燕''T型丁」とパーツを共有した製品となっています。その為、三式戦のキットで指摘された主翼の上反角不足という欠点をそのまま引き継いでしまっています。 とは言え、それに注意して修正を加えれば、他に大きな欠点のない水準的なキットと言えるでしょう。 他に気付いた点としては、脚カバーやインテークのフチがぶ厚く、やや精密感を損ねています。また、風防もできれば開閉選択式として欲しかった処です。
また、キットの品質とは直接関係しませんが、先述のパーツ共用の関係で、三式戦用のパーツが大量に混じっています。ラジエター、ラジエターフラップ、機首のガンパネル、機首機銃の銃身、液冷用の大型スピナーとプロペラブレード、コクピット後部のパーツなど。私は以前三式戦を作った際、固定不良で完成後に機首の機銃を機内に落とし込んでしまい、このキットからパーツを失敬して事なきを得ました。風防のパーツも三式要と五式用が一緒に入っているので、うまくニコイチすれば開状態の風防を作れるかも知れません。
発売当時、一度作らせた成形品に違和感を感じた田宮現会長が再度の実機調査を命じ、 ほとんどの金型を作り直しさせたことで話題となったキットです。 そのかいあってか、当時販売されていた全スケールを通じて一番正確な 零戦キットと言われました。この評価は現在においても変わりません。 なお、このキットは、正確には排気管後方の耐熱板の大きい中島飛行機製の 無印五二型を作ることができます。 三菱航空機製にするには、当該耐熱板を削り落として、二二型と同様に つるつるにするか、正方形に成形した薄いプラペーパーを貼り付けるなどの 小改造が必要です。 キットは主脚・尾輪などの可動ギミックがありますが、あまり触りすぎると 破損する恐れがありますので、固定するのが良いかもしれません。 また、ステンシル類のデカールが寂しいので、零戦二一型の「マーク(b)」を タミヤカスタマーサービスで取り寄せすると良いと思います。
世界の傑作機1989年7月号、陸軍3式戦闘機「飛燕」の特集です。
本機の資料、写真集として定番の一冊です。慣れない液冷エンジンと補器類による不調、その液冷エンジン搭載機ならではのカッコよさ、過酷なニューギニア戦線でのデビュー、本土防空戦における244戦隊の活躍と派手なマーキングなど、ネガポジ相反する顔を持った戦闘機。そんな本機の魅力が、写真とイラスト中心で纏められています。
発行から20年以上が経ちましたが、2004年11月発行の飛燕戦闘機隊―帝都防空の華、飛行第244戦隊写真史とは、244戦隊の写真が数枚ダブっているだけです。2007年11月発行の三式戦「飛燕」・五式戦―キ六○に端を発してキ一○○に至る大戦期液冷発動機装備戦闘機の系譜 (歴史群像 太平洋戦史シリーズ Vol. 61)では「ニューギニアでのマウザー砲改造機はおそらく存在しない」「二型までの応急的な武装強化型が一型丁」「黄緑七号色は暗いオリーブドラブ」などと解説されています。日本機ファンとして、これからも本機の解明が進むことを願っております。
エアロ・ディテール久々の新刊、五式戦闘機です。
RAF博物館所蔵のキ100中期生産型、16336号機を徹底的に取材しています。本機は唯一の現存機として、他書にも写真が掲載されてきましたが、本書では、サイゴンで捕獲されて現在に至るまでの本機の経歴や、あと5年残っていれば処分されなかった、別の13012号機の運命など、過去20年も本機のレストアと調査に携わってきた、日本機研究家の著者によって詳細に記されています。そして、もう見られないレストア中の細部写真、オリジナル塗装が残るコクピットや胴体内部、エンジンや降着装置などを、様々なアングルから撮影した、約200枚のカラー写真で解説しています。同博物館でとても大切にされていることも伝わり、五式戦のファンとして感激しました。
また、電気系統や燃料系統、射撃兵装図、胴体断面形、各翼内の桁の配置まで、機体内部を細かく図解したイラストも、その多くが著者にしか描けないものでしょう。巻末に纏められた大戦当時の写真12枚は、文林堂の世界の傑作機No.23掲載のものより鮮明でした。塗装とマーキングの記述は控えめですが、貴重な16336号機を知り尽くす一冊として、本書は大戦機ファンやモデラーを満足させる内容だと思います。
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