国鉄マンの生涯をリアルに描くため、主演の三国連太郎は、実際にレールの上を走っている本物の蒸気機関車の罐を焚いている。(このシーンのために国鉄の研修所に通って機関助手の訓練を受けたそうだ。その甲斐あってブルーリボン主演男優賞を受けた)
機関車が雪崩に巻き込まれて脱線する場面は、当時の国鉄総裁の許可を得て、設定年代当時の蒸気機関車の実物を走らせ、実際に脱線転覆させている。
実に真剣に作られた映画で、鉄道ファンならば一度はご覧になった方が良いと思う。
また、10代の研修生から定年間近までを力技で演じきる三国連太郎と加藤嘉、まだ若々しく凛々しい高倉健、そして一瞬誰だかわからないくらいスマートな二枚目の梅宮辰夫と演技陣も素晴らしく、見ごたえがあるので、一般映画ファンにもおすすめできる。
親鸞についてもほとんど知識がなく、歴史にもうといのでかなり難解で、また新人を主人公にしたことで迫力に欠けるものがあったが、見ている間から親鸞を監視する役の宝来の存在がよかった、そしてこの人が三國連太郎であることを知らずに見ていて後で知り、見直しながら、何故カメラ目線で宝来が誰より強く訴えたのかがわかった。三國連太郎は養父が被差別民であったことから差別問題を強く訴えてきた。三國は「差別される人も、差別する人も犠牲者だ。これを乗り越えていかなければいけない」と言った。差別する人をまた差別する人が出てくればその差別に終わりがない、乗り越える壁はとてつもなく巨大な壁である、差別、区別、優劣意識というのは人間に無意識的なところにあるものだから。親鸞の説いた「人はみな平等」というのは頭でわかるのはたやすいことだが、心の奥でそれがわかるには、人は誰もが死ぬまで自分の中にある不平等と戦っていくことだと思う。自分の中にある不平等を決して認めず、それが愚かであることを知り死ぬまで戦い続けてゆく生き方が、白い道に繋がってゆくということではないだろうか。この映画はカンヌで三國連太郎の異様な情熱に打たれた審査員の一部が強く入賞を推薦したようだ、私も三國連太郎の情熱の深さにとても感動して、苦手な感想文も書いた。しかし一般の人にはわかりにくいという指摘があり、三國は「『白い道』は失敗作だった。いつか撮り直したい」と語り、続編の構想を練っていたが、ついにそれは果たせなかった。そちらに行った時に続編を見せてください、三國監督、次は是非とも主演でよろしくお願いしたい。素晴らしい生きざまを見せてくださりありがとうございました。
正直、期待していたものとは違っていた。好きな俳優を好きな作家が書くということで、楽しみにし過ぎていたのかもしれない。三國連太郎の出演した名作の解説でしかない。確かに、「この場面の時、どういう心境でしたか」というのを一緒に映像を見ながら聞くなどというのは、とてつもなく贅沢なことだと思う。だから、そういう意味では大変貴重な記録集となった。だが、それは佐野眞一でなくてもよかったのではないか。もっと、三國連太郎の人となりを、生い立ちから遡り、少年期、青年期の軍隊生活、駆けだしの俳優時代などを、佐野眞一特有のねちっこい筆致で書けばよかったのにと思う。佐野眞一の三國連太郎への愛情は感じる。しかし、佐野眞一は取材相手への愛憎があった方がいい作品になる。取材相手への憎しみが必要なのだ。中内功、里見甫、甘粕正彦しかりである。
釣りバカ日記の三國さん、という印象がとても強い俳優さんですが、ある時定期的な医者通いの帰り道にいつものように本屋へ寄って…そこにはアッと驚く程のモノクロ写真で飾られた三國連太郎さんの真剣な顔、そして帯には「生きざま 死にざま」といった表題が付いていて…圧倒されて本著を購入致しました。
三國さんは被差別部落の出身だったそうですね。ものごころついた時から「差別」を味わったと書いていらっしゃいます。割合この部分はさらっと書いておられるのですが、当時の部落差別には相当な偏見があったと聴いております。さぞつらい青春をお過ごしになられた事でしょう。戦争体験についての記載にも三國さん独特の戦争回忌体験が記されております。僕も三國さんだったら同じ道を辿りたかった、と思いました。三國さんが映画「白い道」からですか、宗教観を吐露されておりますが、「今、ここ」即ち現在をどう生きるかーこれに尽きるのだと私自身も感じております。
最終章に「死ぬまで求道したい」旨のお言葉が述べられておりますが、三國さんのような崇高な魂をお持ちの方ならば、必ず成就できること、とかように思っております。とても勉強になった本です。被差別部落、戦争とうとう、理解を深めたい方々は是非これを購入して下さい!必読本です。
最近の映画に多い、派手な音響や映像は、この映画の中には存在しません。 静謐の中に鮮やかに浮かび上がる、日本の美の集約がここにあります。 私が、発売を最も待っていた作品です。 日本映画のNO1の作品です。
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