収録作品は「淫売婦」「セメント樽の中の手紙」「そりや何だ」「労働者の居ない船」「山抜け」「坑夫の子」「移動する村落」の7編。「海に生くる人々」と同様に海の労働者を描いた作品の他に山岳地帯の肉体労働者の過酷で諦観にみちた生活を描いた作品が印象深い。ワーキングプアを描いた作品としてゾラの「ジェルミナール」、スタインベックの「怒りのぶどう」とあわせてお勧めしたい一冊である。
1920年代にタイムスリップ。セメント破砕機に巻き込まれた恋人、その血の色に染まったセメントは恋人入りの赤いセメント、そのセメントと恋人のその後の関係は・・・。スプラッターから恋愛モノへ?答えは書かない著者の著者らしい一冊。答えは読者にゆだねられる。
現代人気作家6人が、近代有名作品に着想を得た短篇を 一篇ずつ書き下ろすと共に、モチーフとなった作品を語り、 最後にオリジナルの作品も収録した3階建てのアンソロジー。
発想としては工夫を凝らしてあり 6×3=18粒分美味しいはずなのだが 通して読んだ時、若干バラバラな印象は否めない。 好きな作家・好きな作品に的を絞って読めば○。
近代文学で有名作家の代表作品(短編)が一冊にまとめてくれたものがないか。
その願いをかなえてくれるのが本書である。1330頁に51編の名作がほぼ丸本の形で収載されている。活字が大きく、総ルビなので読み易い。
中島敦の『山月記』、太宰治の『富嶽百景』などは言うまでもなく、ややなじみの薄い坂口安吾の「波子」、梶井基次郎の「闇の絵巻」など掘り出しものも入っていて、楽しめる。
紅露逍鴎と言われた明治の文豪作品からプロレタリア文学・私小説をも含め、最後は昭和23年情死した太宰治まで広く作品を網羅して豪華な一書となっている。
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