後にも先にもたった1回の小澤征爾の指揮によるウィーンフィルとのニューイヤーコンサートの映像、最初に買ったDVDは画質は良いが 遠景の場面ではカラーモアレが気になっていたが、最新のテクノロジーによるアップコンバートでハイビジョンの様にきれいになった映像に感激ものです。特典映像のバレイや乗馬学校も美しい、買って損なし。
視聴した範囲ですが、夏のwaldbuhneの野外コンサートのなかでは、一番の盛り上がり。
最初の1曲“An American in Paris”こそ緊張の面持ちなのですが、2曲目からは共演となるMarcus Roberts Trioとベルリンフィルとを巧みに橋渡し。全身に情緒が溢れ出ていて、いかにも小澤らしい音楽をつくりあげています。
観客たちも2曲目“Rhapsody in Blue”の完成度に堪らず、もう立ち上がってしまい拍手喝采。こんなRhapsody in Blueは聴いたことがない!といった観客たちの面持ちが窺えます。
後半となる3曲目は“Concert in F”。これもまたRobertsの編曲。第1楽章からそのRobertsのソロパートが光ります。ほんとうに彼は見えていないのだろうか?と思うくらいの運指の軽やかさ。日没とともに吹く風にのせて、第2楽章へ。そして再び脈動する旋律に心打たれる第3楽章。もう総立ちなのです。
惜しみない拍手がおくられるなか、残りの4曲はRoberts Trioとベルリンフィルと交互に2曲ずつのアンコール。“I Got Rhythm”で小澤が見せる茶目っ気にも注目。
最後はお馴染みの“ベルリンの風”なのですが、その最初の旋律が聴こえた瞬間に会場から漏れる(もう終わりなの??という)溜息の大きさにも、この一夜の素晴らしさが顕われていると思います。シンフォニックジャズを堪能できる1枚。
ちなみに同じタイトルのEuro Artsの輸入版は2000円台であります(2009年)。
演奏についてあれこれ語るのはもはや野暮なので、映像について一言。一昨年に続いて、カリーナ・フィビッヒが映像監督を務めるニューイヤーコンサートです。この人の映像の特徴は、天井近くまで設置したリモコンカメラの映像を交えた多彩な視点。さらに、音楽に合わせて舞うような動きも見せるカメラの移動。ステージはもとより、ホール内の天井、壁面、客席をなめ尽くし、さらにラトハウスやコーブルク、ベルヴェデーレなどホール以外の建築や屋外風景の映像も含めると、カメラアングルのヴァラエティは、過去最多と思えます。見方によっては目まぐるしいくらいの切り替え、ズーム、移動ですが、イヴェントを楽しませる映像としては、このくらいの華やかさが心地よく感じます。
BDで見返す楽しみのひとつが、ORFのインターバル映像。今回NHKではとうとうこのインターバル映像を全面的にカットしてしまいました。ウィーン・フィルのウェブサイトによると、オーケストラメンバーによるウィーン・ツアーガイドが収録されるそうなので一安心。それを前提で星5つです。
ガーシュウィンといえばジャズピアニストでありながら、クラシックのオーケストレーションや和声を勉強し、取り入れた異色の作曲家です。アメリカ人のクラシック作曲家としては最もよく聞かれる人ではないでしょうか。ラプソディーインブルーを聴いて見ればすぐわかりますが、普通のクラシックとは全く違った旋律、リズムを取ります。ハリウッド映画にもこんな感じのメロディーはよく登場しますので、どんな人でもある程度は聞きなれているのではないでしょうか。こてこてのクラシックが好きな人には趣味が合わないかもしれませんが、ジャズにも興味があるクラシックファンは是非聞いて見ましょう。
外国オケとはあんまり意識しない私です。例によって店長のおすすめで買いです。みごとな当たりです。ほんとにいいんですよ。曲目もいいし。チャイコフスキーからはじまってアイネ・クライネが来るっていうのが1枚を堪能できる工夫かもしれません。
モーツァルトのディベルティメントが入っているのですが、他の盤に比べて、あまりに分厚い音色で異色の出来だと思います。ジャケ写のように大人数で演奏しているのか、一人ひとりの音量が大きいのか。編成人数は決まっていると思うんですけど。サイトウ・キネンのメンバー自体がタレントぞろいなので、アンサンブルを揃えるのはそうとうな工夫があったと思います。小澤さんの力量でしょうか。パワー系演奏だと思います。
小澤さんの復活、サイトウ・キネンでの演目がコレだったので(チャイコフスキー)、いま旬の一枚になりました。本家ヨーロッパの楽団よりもストレートで、スコアだけ見て後は伝統にとらわれすぎず現代に即してプレイしているように感じます。アメリカのオケにもよくある傾向で「やればできる的」エネルギーが体現されていると思う。そういう意味では、ドゥ・ダメルも小澤さん的な次世代かもしれないです。
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