1975年、1本の映画が話題になった。 その名を「ザッツ・エンタテインメント」。かってハリウッドで一世を風靡したMGMミュージカルの傑作たちが、アステア、ケリー、シナトラ、ミネリらの豪華スターのホストのもと、粋な構成と繋ぎで、お馴染みのナンバーと名場面と共に次々に紹介されるというそのアンソロジー映画は、全米のみならず、日本でも、シニア/ミドル・ファン層を中心に絶賛され、大ヒットした。 そして、その映画を鑑賞した映画ファンたちの間では、当然、自らの映画体験を基に、極私的夢の映画として、“それぞれのザッツ・エンタテインメント”を夢想していたと思うが、その“夢の映画”を具現化してしまった人物がいた。 御存知、矢作俊彦である。
日活アクションの大ファンであり、ハードボイルド作家としての自身の小説でもその匂いを発散させる矢作が、にっかつが創立70周年を記念して監督のみならず、脚本、構成まで担当し、撮り上げたのが今作。 チョイスされたのは、「紅の流れ星」、「嵐を呼ぶ男」、「ギターを持った渡り鳥」、「危いことなら銭になる」、「泥だらけの純情」、「拳銃は俺のパスポート」、「黒い賭博師」、「赤いハンカチ」などアクションのみならず、青春映画や文芸映画も交えての38本。 誰もが納得の傑作のみならず、知る人ぞ知るクセモノ作もラインナップされているのが、さすが一筋縄でいかない矢作らしい処だ。 宍戸錠がホスト役として、自身が演じてきた年老いた“エースのJoe”として、かっての仲間たちを捜し求めてさすらうと言うシチュエーションがニヤリとするし、個々の作品が未見でも楽しめると思う。 自分は、83年公開時、今アンソロジーでは意図的に?外された清順作品にハマっていたので、観ていて、なんで清順さんの映画が出てこないのか、釈然としなかったが、逆に、今作以降、日活アクションに興味を覚え、この後、一時期熱心に名画座で追いかけた事を思い出す。
昨年来、日活生誕100周年を機に、当時の作品が数多くDVDとして発売されているのに呼応したかの如く、絶好のタイミングでソフト化された今作。 かっての日活アクション・ファンなら、懐かしさで胸が熱くなるだろうし、まだ未知の者たちなら、日活アクションへの魅惑の扉を開ける契機となるのではないだろうか。
そして、また、それぞれが、新たな“夢の映画”を夢想していくのも、映画ファンの秘かな愉しみなんだろうな。
オリジナルを全話収録がいい。
角川版や光文社版を読み、はて全作おさえたのだろうか、と長年思っておりました。で、今回の刊行、谷口ジロー画伯の挿画もフル収録で復刊としては完璧な出来栄えでは。
内容はいまさら語るまでもないですが、所謂ハードボイルド的なフレーズ満載で、矢作氏独特の翻訳調文体も冴え渡っています。展開を楽しむというよりは、その世界につかの間浸る、てなカンジでしょうか。夜中に時々ひっぱり出しては浸っています(笑)。
もう待つことさえ諦めていた、二村刑事シリーズの第3作。横浜に生まれ住む僕にとって、矢作俊彦は特別な作家だ。隣に住んでいる、とっぽいお兄ちゃんが書いているのかと思わせる、ウチの隣近所を舞台にした物語と、チャンドラーのパクリを隠そうともしないその傾倒ぶりに、プロットだのなんだのはもう関係なくなる。そんなシリーズがまた読めるとは、予想だにしていなかった。ひとこと、うれしい。 物語はタイトルにある通り。「長いお別れ」へのオマージュそのもの。初めて読む人は、ちとアクの強すぎる台詞と、僕にはお馴染み過ぎるくらいの固有名詞や地名の羅列に面食らい、腹を立てるかも知れない。しかし、チャンドラーだってあれほどLAを細やかでリリカルに描かなかったら、今僕たちには読まれていなかったのかも知れないのだ。そういう世界にどっぷりとハマることができれば、この作品は名作となる。いい歳をして愚直なまでにチャンドラーをパクる、矢作俊彦の熱狂的な稚気に乾杯。 なお、舞台設定は実在の町や建物を下敷きにはしてあるけれど、微妙に設定を変えているので探してもムダ。でも老婦人のバー「カーリンヘンホーフ」は実在する。店名と営業形態は違うけれど、ポテト・サラダは本当に美味いですよ。
矢作・司城コンビだと矢作単独作品より舞台設定のスケールが大きく、アクションも多い、というのがこれまでの印象。今回の舞台は沖縄に限定されていて、その分、以前の作品より人物描写が細やかな気がする(、って、以前の作品のこと、あんまり覚えてないんだけど)。 例えば主要登場人物の名前。「ヨシミ」「彬」「森」「早枝子」、それぞれに曰くがあり、それがメインストーリーに挿入されることで、彼らが追い込まれる/突き進む心理にリアリティが出てくる。
本作を読んでいる期間にナンの意図もなく、たけしの映画「アウトレイジ」をDVDで見た。こちらもヤクザ同士の話で、追い込まれ/突き進み感も似たようなところがあるんだけど、登場する個々人の背景描写はなく、たけし独特のちょっとした“間”以外は息つく暇もない。そういう意味では本作は「ロマンチストなのかな?司城は」といったシーンがいくつかあって、ホッとする。ま、このへん、「ぬるいな」と思う人もいるかもしれないが、それは好き好きの範疇であって作品のテンポには影響していないように思う。
矢作ファンの延長線上で合作も読んでいる、というのが正直なところだけど、矢作作品は主人公を軸に話が進むので、本作のような複数の登場人物の視点で物語が進むというのはとても楽しめた。本作の後も合作が出ているようなので早期文庫化を切に望んでいる。
矢作俊彦原作、谷口ジロー作画という名コンビのコミックが復活した。
ホンゴー・ヨシアキとノリミズ・リンタローの二人を主人公としたアクションコミック。
元のコミックはGOROという雑誌に連載されていたというが、当時はもうGOROは卒業していたので読んでいない。
ということで、初めて読んだけど、フランス外人部隊なんて、ちょっと設定とかは古臭いが、やっぱりこの二人のコンビはなかなか面白い。
昔買ったハードボイルド探偵もの、どこ行ったかな?
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