原作を読んでからと思い文庫本も買ってあったのですが、出張フライトでの映画プログラムに入っていたことから待ち切れずに一見。いい映画で時間を忘れることができました。
内容はネタバレになるので触れずとして、お題は男親と息子の相克と和解ということになるのかと思いますが、堤真一(東軍)と中井貴一(西軍)のそれなりに渋い演技が舞台・状況設定の大掛かりさ(奇妙奇天烈さ?)と相俟って、独自のリアルさを醸し出していたと思います。
ちなみに、蜂起の合図として瓢箪が現れるやそそくさと席から立ち去る市井の人々を描いたシーン。こういうシーンが私は好きです。
私は佐田啓二のことをよく知らない。映画もほとんど見たことがない。 図書館で、ふとこのタイトルと作者名を見て手に取ったのは、池部良のエッセイに佐田啓二と奥さんのことが書かれていたから、だと思う。 ひょっとして、池部良のエピソードもあるかなと思ったら、解説が彼だったので借りることにした。 佐田啓二――今はもう、中井貴一のお父さんというのが、一番分かりやすいだろう。 かつて一世を風靡した二枚目俳優であり、木下恵介や小津作品の常連でもある。そして、東京オリンピックの年に三十七歳の年で事故死した。その時、中井貴一は僅か二歳、姉の貴恵さんは六歳だったという。 貴恵さんと同級生の子を持つ故田村高広の話によれば、夏休み明けの父兄参観を非常に楽しみにしていたという。 また、貴恵さんが生まれたときには、小津監督に「美女誕生」と電報を打ったそうだ。 子煩悩で、仕事が休みになるとよく子供たちと遊んだらしい。この本には、何枚かそういった写真が出ている。 中井貴恵が、僅かな記憶と他人から聞いた話を書いたこの本を読んでいると、本当に惜しい、と悔しく思う。「いい人」と表現されることが多いが、むしろ「いい奴」だったのではないか、と思う。 小津監督のエピソードもある。彼は中井貴恵を大変可愛がったそうで、彼女の母親が彼女を叱ると、「お前は鬼のような奴だ。何でこんな可愛い子を叱るんだ!」と泣き腫らした目で怒ったそうだ。また、中井貴恵は小津監督に何度も「いないいないばあ」をさせた、とそういう話がいくつもある。 普通であれば、聞くことのないエピソードの数々。ほのぼのとして、笑ってしまう。中井貴一の天然ボケは、間違いなくDNAのなせる業だろう。(いい意味で) 佐田啓二がもう少し長生きしていたらと思う一方、そうであったなら、中井貴一という役者は存在しなかったかもしれない、と思う。 小津監督が呼んだ、と思うほかないだろう。全て運命なのだと。 収録された写真を見ると、佐田啓二と中井貴一がそっくりなのに何度か驚く。 これも血なのだろう。 中井貴一の書いた、こういうエッセイも読めるなら読みたいものだ。
巨匠黒澤明と、クロさん、コンちゃんとお互いを呼び合う
日本代表する映画監督の市川崑の本です。
関わりがあった人たちのインタビューを元に
市川監督の人柄や、どういう点にこだわっていたかが
少しだけ分かるようになっています。
身につける物は高級品のみ。
文房具はエルメス。
コマ単位でも間違いを見抜く眼。
でも本当は現場の助監督や美術担当の人の話ももっと伺えていたら、
もっと現場でのコダワリ部分のエピソードが掘り出せたんじゃないかと
市川ファンとしては、もっと奥深い事まで知りたいのです。
そのへんは、数多く出版されている黒澤本に比べて、少々弱いといえる。
が、一般の映画ファンなら、このぐらいの話がちょうどいいのかもしれない。
市川ファンとしては、金田一シリーズのLDやDVD BOXに収録されていた
監督自身のインタビューよりも濃い内容が知りたいのです。
このプリンセストヨトミ、姫の話であるよりも、会計検査員の税金の使われ方の調査が主力。
検査員の綾瀬はるかさんの振り切れ方がいい。
また人生に2度だけ通る、大阪城に向かう絨毯の道もいい。
こんな大切な習慣を戦後(大阪冬の陣、夏の陣から)ずっと守り続けている大阪の皆さんがうらやましい。
新幹線から見える、富士山の麓の幻影も、これから新幹線に乗る楽しみを増やしてくれる。
すごい盛り上がり、というよりも、みんな人生を背負っていい仕事してまんなあ、という感じ。
大阪の楽しみ方をしっかりと映像にしてくれた皆さんに拍手。
プロの作家さんではないので、中国の描写にはいまいちピンと来ない部分があることや、最後がなんとなく尻すぼみになっているなど本として完成されてはいないと思いますが、著者の人の良さと撮影の苦労の雰囲気はよく伝わります。 宮本輝氏の「ひとたびはポプラに臥す」(全六巻)を興味のある方にはお薦めしたいです。
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