作者の処女作ですが、女性なら誰もが通る老いへの不安、女としての魅力が失われていくことへの焦り。 とてもうまく表現されていて、共感を覚えました。 最初の部分で、夏が終わろうとしていた。という短い文章にすべてが集約されていて、見事です。 まだ女盛りなのか、ただ枯れていくだけなのか、問いかけもあるのかもしれません。
森瑤子さんの「料理手帖」とやっとめぐり合いました。この本が出されたことは私はまだ学生でした。本屋さんで立ち読みして、その料理の多様さや彼女の美意識がちりばめられたページに大変魅惑されたものです。当時は両親からの仕送りで生活をしていたので、この本を買うお金もなくて、そこから6〜7年経過して社会人になったときに、欲しいなと思い探しましたが、もうどこにも出ていませんでした。神田の古本屋へいく都度に探しましたし、復刊を望んだりしたのですが、どれも不発。そこからまた5、6年経って、もしやと思いAMAZONをみたところ、出ていました。うれしかったです。 バブルの時代の、1980年代&1990年代が詰まっている本です。新しさを求めるならばお勧めはしませんが、森瑤子さんが好き、彼女の美意識が好きという方には、面白い本だとおもいます。
●心霊アプリ 心霊写真が撮影できるというスマートフォンのアプリで 冗談混じりにいろいろな人の写真を撮っていく話。 悪い筋書きではないが、ベタすぎて展開が読めてしまうのが残念。
●来世不動産 人生を終えた男が来世はどんな生き物として過ごすかを不動産屋に紹介してもらう話。 今回一番のヒット。ネタは単純だが役者のノリと雰囲気で惹きつけられる。
●蛇口 身近な人に命の危険が訪れると、不思議な蛇口が見えるようになる男の話。 先の展開は読めるし、登場人物に魅力はないし、 蛇口が見える設定がほとんど活きていないストーリー。かなりイマイチ。
●相席の恋人 喫茶店で相席してきた老人に「恋人だ」と打ち明けられる女性の話。 そもそも喫茶店で相席を頼まれる、という設定にかなり無理があるし、 凝った設定にした割に何も面白くないシナリオ、 主人公と違って観ている側はそれほどスッキリしない結末。
●ヘイトウイルス 他人への憎しみや暴力がウイルスによるものだという世界観の話。 設定自体は悪くないが、気を持たせすぎる役者の演技と あまりにもつまりないオチが厳しい。
重層的にいくつもの恋愛関係が絡まり合うが、圧倒的な 筆力がそれを感じさせない。愛憎にまみれた話なのに、 鬱々とせず、華麗。 本のタイトルは「嫉妬」であるけれど、女性が読むと、 女主人公の焦燥感や嫉妬とその相手の男よりも、女主人 公の娘と女主人公の関係に目が行くのではないだろうか。 ただの恋愛小説では、ない。
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