これは素晴らしく充実したつくりの愛蔵版。一生の宝になりそうです。
私は講談社文庫版、ちくま文庫版とも持っていますが、やはり大きな絵でみると、永島慎二の「思い」がより深く伝わってくる気がします。
「フーテン族」っていってももうほとんど通じないんだろうし(当たり前ですね)、ここで描かれる「フーテン」も多分に美化もされてますが、それでもなお、「あの時代」を切り取り物語として定着させ、私たちに残してくれた永島氏には最大限の賛美を贈りたいと思います。
「シリーズとして描かれたものではないので違和感がある」という理由で、「星の降った夜」、「はたちの夜」、「漂流者たち」が外されていますが(この版で初めて永島慎二の世界に触れる方のために、おまけとして載せてほしかった)、後日談ともいえる「残光」(75年)が追加収録されています。
休筆にあたっての永島氏の言葉も誠実ですし、再開時に、それまでのいきさつを描いた数ページも貴重。私は初めて目にしました。
ブックレットの、村岡栄一、向後つぐお、シバ(「若者たち」の主人公たちですなあ)による鼎談も、当時の裏事情が詳しく語られて楽しい。
終わり近く、向後氏が、「永島先生に会いてぇな。会いにいこうかな。(村岡氏に)泣くなよ」と語るところでは、胸が熱くなりました。
たかが漫画、されど漫画・・・「漫画」に正面から立ち向かった魂の記録がここにあります。
永島慎二さんn漫画家残酷物語も久しく 会えなく、ようやくご対面できて年甲斐もなく 感激して読みました。 ありがとうございます。
著者の作品初購入。
短編10話が収録されており、いずれの話も漫画家や、それを志す者が主人公となってます。
著者略歴からも、うかがえると思いますが、著者は『漫画』というものをこよなく愛しており、それが、劇中の台詞であり行動に表れています。
しかし、『漫画愛』は伝わってきますが、話としての面白さとは別物で。
それと、本作は所謂 『私小説的漫画』ではありません。 主人公は著者自身ではないですし…。 そのあたりを勘違いなさらぬように。
今日の漫画文化の礎を築いた、偉大な先人達の1人である著者に御冥福を。
昭和の青春や、自分の夢に向かって生きていく5人組についてかかれていて、とてもよかった。
1960年代のコトは、全然知らないけどなんとなく、その時代の風景や、人々のきもちが、わかってよかったです。
嵐主演映画なので必ず映画館までいって、見に行きたいです。
永島慎二氏の作品は独特です。 私小説と虚構が織り交ざったようなエピソードと印象的なコマ割り。 抽象画のようなデフォルメされた絵。 文学の世界に太宰治がいるように、ストーリー漫画の世界に永島慎二がいます。 『フーテン』という言葉はもう死語になっているでしょうか。 『男はつらいよ』のフーテンの寅さんが一番有名ですが、フーテンの風俗・生態はこの『フーテン』が最も良く残してあると思います。 瘋癲(ふうてん)という精神疾患を示す言葉だったそうですが、この作品で描かれているような若者が1960年代新宿に現れます。 60年代、ここに描かれた若者は確かにいました。 退廃的であり、芸術的でもあり、無気力であり、平和であり、といった感じでしょうか。 仲間になったつもりはなくてもいつの間にか顔なじみな連中になっています。 時折こういう世界に憧れたワーカーホリックの中年男性が紛れ込んだりしていました。 今でも新宿に『フーテン』はいるのではないでしょうか。 同じような若者達は少しづつ行動形態が変わってゆき、時代時代でいろんな呼び方をされますね。 永島氏は1960年代の一場面を見事に切り取っています。 『フーテン』の発表の場は主に「COM」「ガロ」「プレイコミック」となっています。 「COM」や「ガロ」といった雑誌があって良かったと今更ながら思います。
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