テレビサスペンスで放送されたため、古谷の金田一シリーズは格下の作品のように思われているが実は映画石坂浩二版金田一より完成度が高い。ちゃんと推理物としての整合性があるし金田一は事件解決に大活躍する。制作時間や費用の関係から詰めの甘さは散見されるもののテレビシリーズとは思えない力の入れ様だ。マイナーな作品が映像化されているのも嬉しい。 傷痍軍人さん、木造の駅舎、蒸気機関車など古い日本を思い出す映像も僕には懐かしい。この時代の作品は僕ら世代の人間の懐古趣味目的にしか販売されていないのだろうが今の若い世代の人にこそ見てもらいたい。 橋を走る汽車から突き落とされて生きてるのは有り得ない。明智小五郎の見過ぎでしょう?
若い世代にはピンとこないと思いますが、40代以降の人間にとって「日活ロマンポルノ」という言葉を聞くと、何だか甘酸っぱいものを感じざるをえません(笑)。1971年に白川和子の「団地妻シリーズ」を皮切りにおびただしい数の作品が生まれましたが、なかでも作品性が高いと言われているのが「女教師シリーズ」でこの作品が第1弾です。
永島暎子はいまでもテレビドラマで脇を固める女優ですが、一躍名前が知られるようになったのが1977年公開の本作品です。何とも悲しげな表情をたたえつつ、これでもかと不幸に祟られる「M的演技」は彼女の専売特許です。この作品でデビューの故・古尾谷雅人(当時の芸名は康雅)が悪の限りを尽くす不良中学生役として出ています。ほか、ロマンポルノの常連、江沢萌子のほか、樹木希林、久米明、穂積隆信、蟹江敬三などけっこう豪華な共演陣です。
作品としては確かにロマンポルノなのですが、情交シーンにしてもビールや砂などをモチーフ的に使うあたりは日活の映画マンのプライドを見る思いです。1960年代後半の新東宝をはじめとした「ピンク映画」ではスタッフの人数がせいぜい5、6人だったのに対し、日活では一般映画と変わらない最低20名単位で撮影に臨んでいたとか。AV世代にとっては何とも「もどかしい内容」ですが、当時の時代背景を含めてご覧になっていただきたいと思います。
兜町は私の職場のある場所です。現在では株取引の多くがインターネット等による売買となり、証券取引所にも「場立」が無くなり、以前テレビで見ていたように株が急騰したとき、証券マンがひしめきあうように手サインで株を売買する姿が無くなったため、本書に載っているような兜町の活気はありません。本書は昭和30年代の岩戸景気を背景とした株人気に生きた一人の相場士を描いています。現在もそうですが当時は株の配当よりもキャピタルゲインを重視していたので、投資家達も相場士の動向に注目していたし、中小の地場証券が多くあったため、それらの証券会社が相場のスターを求めていたという背景がよく分かります。古き良き兜町に生きた一人の相場士のがむしゃらな生き様にすごく共感できました。
本書は京都産業大学の創設について書かれたものです。主人公の千田は鳥取の倉吉北高校を創設した小野良介で、初代学長の天野は天文学者の荒木俊馬がモデルとなっています。京都産業大学は現在では多くの学生を抱える総合大学ですが、その大学の産みの苦しみが非常にリアルに描かれています。そして夢でしかなかった大学か形となって現われて来るに従って出てくる人間のエゴや欲望についても。 本書を読んだあと京都産業大学のHPをみて愕然としたのは、創設者「荒木俊馬」についての功績や人物紹介に多くのページが割かれていることです。しかしその中に小野良介という文字は全く出てきません。「虚構」という文字が示すように、本書によってはじめて京産大の本当の歴史が明るみに出たのではないでしょうか。
風采の上がらない男から2百万円で買い取ってくれと言われ羽振りのよかった主人公はそれを買い取る。
だがその1枚の罫線が、ひとりの株屋の運命を狂わせる…。
「こ、これは!………この不景気に、この罫線が大相場の到来を予言している。間違いないんや!」
しかし相場はピクとも動かなかった。そして、万策尽きて駒田の経営する弱小証券が廃業記者会見を行っているその時に、
「陰極まった相場は意外な出来事を呼ぶ」………。印象的なラストシーンで終わります。
印象的なラストシーンは圧巻!著者の作品でベスト3に入る力作
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