この本の内容はBPDにとって強烈であり、時に腹立たしくもなるようなものかもしれません。 しかし、BPD当人であり、重症でなく、よくなりたいと願い、向き合う勇気があるなら、辛いのを覚悟であえて読んでほしいと思います。 なぜなら、これはBPDと深くかかわる人から見た視点が記載されているので、自分の状態がわかるようになっています。 それが辛い作業でもあるので、フラッシュバックもときに出ますが、逆に絶対直してやるという意欲も出てくる代物です。 BPDを批判するだけでなく、代弁してくれる数少ない本です。
ボーダーラインに関わる友人・恋人・家族を対象にした本。それゆえ、あまり 専門用語を使っておらず、平易な言葉で書かれている。また、理論的な側面より も、実践重視で具体的な対応案などが中心であり、明日からでもすぐに使えるよ うになっている。
ただ、本書の考え方として、BPDはやっかいで自分勝手な人というニュアンスが ちらほら見え隠れする。そして、どのように距離を取るのかバウンダリーを作るの かがメインとなっている。確かにそれも大事ではあると思うが。
あと、用語的に何箇所か間違った風に使っているところもある。その一つは「 アクティングイン・アクティングアウト」という用語で、本書では前者を自分を 傷つける行為という意味で使い、後者を他者を傷つける行為という意味で使って いる。
この用語は精神分析の文脈で使うと、前者は面接場面において言語ではなくそ の他の方法で葛藤や欲動を表現することという意味であり、後者は面接との関連で 、面接室の外で治療者のいないところで何らかのアクションを起こしたり症状 化がなされたりするという意味である。また両者とも治療者との関係においてと いう前提がある。さらに、これらの用語には否定的な意味はなく、良い行動も悪 い行動もアクティングイン・アクティングアウトと呼んでいる。
一般的な精神医学用語・精神科用語からアクティングイン・アクティングアウ トと言うと、精神分析的な意味合いとはまた違い、治療とは正反対の問題行動 ・悪い行動・症状悪化などを指している。
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