ブローウェル編の天使の死やベニーテス編のブエノスアイレスの春などの新録も、テンポを溜めるところや声部の弾き分けがツボを心得ていて、聴いている方を唸らせる演奏です。 再録のタンゴ組曲やタンゴの歴史も含めて、福田さんのピアソラものの集大成と言える一枚ではないでしょうか。
福田氏が細部にまでこだわり、満を持して完成させた芸術
研ぎ澄まされた感性が痛いほど伝わります。
時に雄弁に時に物悲しく、また、穏やかに語りかけてくれます。
福田氏と渡辺氏の両ギタリストの合作。お互いにジャンルの違う音楽を指向してきたが、ギターを愛する仲間として美しい音色を奏でている。二人が所有する名のあるギターを次々と紹介しながら演奏が続いていく。デジタル出力は96kヘルツ、24ビットも出力しており良質のDAコンバーターで変換すればよりきめの細かい音質で鑑賞できる。
先ずおやっと思うのはギタ―の音が金属的な響きを持っていることだ。ひょっとしてリュートかなと思わせるこのギターの響きは、しかし決して無機質ではなく、むしろ瑞々しい潤いを持っている。
福田はこのギターを駆使して強弱・硬軟織り交ぜ、ギターで表現可能なあらゆる音色を次々と表現してみせる。その振幅の大きさには圧倒される思いがする。それはあたかも厚い雲の隙間から行く筋も降り注ぐ陽光が地上の複雑な起伏を次々と照らし出す様な目紛しさと強烈さを持っている。
どの1音もおろそかにしない。その1音に最適と思われる音を考え尽くして表現する。それは命を削るような作業に違いない。音楽家というのは大したものだ。しかしそこまでしてもその音楽はあくまでバッハであり、それはバッハの音楽に真面目に対峙し、それに奉仕したいという福田の姿勢を表しているのだと思う。その姿は感動的だし、聞く方もそれを感じ尽くしたいと本気で思わせる素晴らしい演奏だ。
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