この作品で描かれた丹下左膳像のあまりの変わり様に原作者は激怒したとか。でも私は今作の大河内傳次郎演じる左膳がたまらなく好きだ。カミさんの尻に敷かれっぱなしで、だらしが無い。口調は荒いが気は優しい。いきあたりばったりだが、約束は必ず守る。剣の腕が立ち、仇討ちともなれば鬼神のごとき強さを発揮する。躍動感溢れる殺陣。なんとも魅力的。これは例えれば、原作のイメージとはかなり掛け離れているものの、「カリオストロの城」の宮崎駿のルパン像をこよなく愛するのに似ている。逆説と繰り返しの手法を多用したムダのない物語、今でも充分通用するコメディセンス(望遠鏡を覗くシーンは爆笑)、ほんまもんの芸妓さん喜代三演じるお藤の艶っぽい歌と声、沢村国太郎演じる柳生源三郎の、全然柳生一族っぽくないのほほんぶり。定期的に何度も観たくなる傑作コメディ時代劇。字幕付きなのも二重丸。山中貞雄さん、あんたはどこまで天才だったんだ。
関の孫六作の名刀を奪おうとする左膳。名刀に隠された秘密も読み進むと明らかになってきます。場面が素早く展開して飽きさせないのですが、表現が冗長なところがあります。講談のような言い回しがあるのですが、これも時代の味です。登場人物は、皆、個性的です。驚いたのは、左膳が辻斬りをする非道な悪役に描かれていることです。最後の場面で、刀を失ない、海を流れていく左膳。これからどうなるのか。次の巻が、楽しみです。
昭和27年制作の阪東妻三郎版
元祖ハンディキャップヒーローと言えばやはり「姓は丹下、名は左膳」ですよね こういったハンディキャップヒーローって世界に他にあるのかなぁ・・・ って色々思い浮かべてみましたが 「片腕必殺剣」にしても「盲目ガンマン」にしても「座頭市」以降で 丹下左膳ほど古いモノは思いつかないんですよね ピーターパンのフック船長とか、悪役には色々いそうですけど ヒーローとしてはいないかも こういう本来弱いものが強いものに勝つのを喜ぶ「判官贔屓」は元々日本人独特の感性なんですかねー?
ところで お話は定番のこけ猿の壺とチョビ安です 手塚治虫の漫画にもなってますね
定番の話だからか手馴れた感じで 思ったより展開のテンポもよく カメラワークも面白い めちゃ楽しめるきちんとした娯楽作品に仕上がってます
阪妻の金に目がくらんだり、飲んだくれてたり、ヒモ生活してたりの ヒーローらしからぬ世俗まみれキャラがいい味出してるし ヨメ、淡島千景とのツンデレやりとりも楽しい でも決めるときはやっぱりキメてくれて チョビ安が人質にとられて、素手で乗り込むラストはめちゃかっこいいですね
ただ、黒沢以前の時代劇は 刀と刀の当たった時の「ガキーン!」って音や 斬られた時の「ズバッ!」って音がないんですよね 本来はそんな音しないんでしょうけど 殺陣でこれがないと物足りなく思ってしまうのは僕だけでしょうか・・・
あと、ひとつ気になったのがお嬢さん(喜多川千鶴)が薹が立ち過ぎちゃうの・・・って点です あれはローティーンぐらいの設定ですよ実際は、たぶん 「あの歳で人形遊び(そういうシーンがある)やってると寒いですよね」 「何でこういう配役になっちゃったんだろう」 って一緒に見た人と話してたんですが 結論として「敗戦後7年なんで、戦争で若手俳優が死んじゃっていなかったのでは」ということになりました
まぁ婚約相手の柳生源三郎(高田浩吉)も若くないんですけど、こっちはそれほど気にならなかったです
トヨエツは昔金田一耕助を演じていたことがありました。一生懸命熱演しているのは分かるのですが、イマイチのれませんでした。今回も、キャラクター色の強い役なので不安でしたが、良かったです。派手なチャンバラは意外に少ないものの、人情の機微にあふれた演出であきませんでした。でも、かつみ&さゆりは、ちょっとウザかった。
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