18世紀後半の、男子を産むことだけを期待されて夫との心の通い合いがない異常な夫婦関係、ダブル不倫、特に奇妙な三角関係(夫の不倫相手に対する友情と憎悪)、妻が不倫の代償として犠牲にしなければならなかったことが、市民の政治参加が拡大しつつある当時の英国社会を背景に描かれる。話はギリギリ陳腐さを免れていると言うべきだろう。
しかし、18世紀後半の貴族社会ものの映画に求める視覚的な華やかさが不足している。衣装やヘアメイク等が凝っているのは分かるが、全体の色調が暗めで、鮮やかでない。映像の美しさの点で、同じ18世紀後半の貴族社会を見せてくれたバリー・リンドンには及ばない、というのが私の感想。
出番は少ないが、シャーロット・ランプリングの存在感はさすが。
「高邁と偏見」のときも、キーラ・ナイトレイでしたけど、 あのときは、娘さん役。清楚だけれども、芯のしっかりした たくさんの姉妹の中で、しっかりもの、という役どころを みごとに演じてました。
さて、彼女、本作品では、すっかりオトナの女、侯爵夫人の苦悩と 悲しみをみごとに演じて、すばらしいです。 単に、きれいでかわいい女の子と思っていたら、まったく 演技派女優を見事に出しています。
また、景色がきれいです。こういうのは、Blue-Rayでないと いけませんね。侯爵役のレイフ・ファインズは、何を考えて いるのか、よくわからないテイで、この当時の男尊女卑な 領主、侯爵の感じをよく出しています。抑えた演技。
それにしても、この時代の女性は、まことにかわいそうな 地位ですね。閉ざされた家の中で、子供にしか希望がもてない そんな暗黒な時代。現代までの道程を顧みると、大変な彼岸の差を 感じます。
時に自分とまったく同じ感覚の持ち主ではないかと思える発言をする人間に出くわす。私にとってはジェフ・エメリックとこの本の著者がそういった人たちだ。共通するのはちょっとひねったユーモアのセンスであり、なんだかんだ苦労がありつつもシリアスになり過ぎずにさっと肩の力抜いて生きていく姿勢だ。長いことこの本は絶版状態であったのだが、ついに2007年までの書き足しをつけて再販となった。とにかく随所にビシビシ炸裂するギャグは笑えるし、ディランをはじめとする伝説的アーティストとの交友の広さに驚く。ジョージのセッションに参加中、ジョンの訃報に接したあたりの記述はビートルファン必読。非常に英語的な言葉使いで綴られているので邦訳は出ないと思うしされても雰囲気が伝わらないだろう。これを読めるようになるために英語力を磨こうという心意気を持とう。
アルの最高傑作はこれか、「Stand Alone」か迷うところだ。 無理を承知で言えば、ゴージャスな「Stand~」か、そういう装飾を剥ぎ取った こちらがいいかという問題だろう。 私的にはジャケの雰囲気及び13の存在でこちらに軍配かな。 (物言いがつくかもしれない) Bob Dylanのレコーディングに参加したいがために弾いた事も無いオルガンが 得意だと言って参加して以来、いつのまにやらオルガン名人みたいになって しまったその度胸のよさというか度量の広さが、音楽の幅広さや奥深さに つながっているのだろう。(ちょっと強引?) 名盤であることは間違いなし。買って損なし。
この作品といい愛を読む人といいレイフファインズがいつか噛み付くんじゃないかとヒヤヒヤして観てました!
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