赤ちゃんが何を感じ,何を想っているのか。親心はど
こまで通じているのか。
発達心理学が切り開いた最新の知見を参照しながら,
素朴な疑問に応えてくれます。
コラムが豊富で,専門書ながら読者を飽きさせない構成
となっている一方,母親のこころ,父親のこころに焦点
を当てたチャプターも用意されているなど,乳幼児に関
連する心理学のトピックに幅広く触れることができるの
で,入門書としても優れています。
もっとも,まだまだ研究が進んでいない課題も多いよう
で,研究結果からの推論にはやや大雑把なところが見ら
れます。せっかく科学的な
調査を参照しているのに,最
後の一押しが物足りないので,全体として,僕たちが経
験的に知っていることを追認するだけの議論が多くなっ
ています。
研究テーマそれ自体が興味深いだけに,科学の醍醐味が
味わえない点がとても惜しく感じられます。今後の発展
に期待を込めて,星4つ。
「タイムトラベラー」の原版はとうの昔になくなっているそうです。現在では信じ難い話ですが、このドラマが撮影されたビデオテープは当時は高価で、当然のごとく別の撮影のために消去されたということです。
そして、これも凄い話ですが、このDVDは、当時極めて珍しかった家庭用ビデオで録画されたものを基に、デジタル処理や、別に録音された音源を利用して再生されたもののようです。よって、画質・音質はお世辞にも良いとは言えませんが、致命的なほどでもなく、私は十分に楽しむことができました。
ただ、初めてこの作品に接するような人には意味のないものかもしれませんね。なんといっても最終話だけですし、それ以外でいうと、和子は確かに可愛いのですが、今流行りのシャープな小顔ではありません。むしろ、当時はか細く頼りなげに見えたケンが、案外、今の若い人から見てもカッコいいかもしれません。
ただ、戦争中にまともな治療も受けられずに死んでいった和子と同じ年頃の少女(非常に可愛かった!)を昭和47年に連れ帰ろうとして消滅してしまった母親を見て、人生にはどうにもならない問題が厳然として存在することや、科学の進歩が万能ではないということも多少感じるかもしれません。
この作品は、現在もロングセラーを続ける筒井康隆さんの素晴らしい小説「時をかける少女」を、奥行きの少ないビデオ映像で、ほとんどを素朴に、しかし、時に強烈な雰囲気で映像化していると思います。それによって、非現実な世界に置かれた普通の女子中学生の心に奇妙に同調し、その心の揺れや意外な強さ、あるいは乙女らしい優しさをよりピュアに感じ、多くの人の心の奥深くに忍び込んでしまったように思われます。その点では、原田知世さんが主演した同じ原作の素晴らしい映画にすら優っているように思います。