服装に無頓着な中年男性の私が観る度にジーンとくるものがあるから、この面白さは普遍的なのだろう。
本作で普遍的なものとは何か。まず第一はワーク・ライフ・バランス。仕事のプロとして成功を求める一方、家族・友人・パートナーとの生活を円満に保つ難しさ。多くの人が悩む問題にフォーカスしているので、共感を呼ぶのだろう。
第二は、上司と部下の関係。本作での
メリル・ストリープ演じる上司(ミランダ)はまるで暴君だが、
アン・ハサウェイ演じる部下(アンドレア)ののびしろを見抜き、引き立て、最後は彼女なりの流儀で部下の新たな旅立ちを見送る。それは女優としてメリルの世代からアンの世代への応援に重なる。
第三は仕事に対するプロ意識の徹底。ミランダの弱みを見せずに自己のスタイルに殉じる、ぶれない態度は、あれはあれで立派だし、アンドレアもそれに感化される。彼女が違う道を選んでもそれは活かされるはずだ。
この第二と第三のポイントが終盤一気にはじけるから、映画はすがすがしい余韻を残す。
ファッションが巨大産業であることがわかるし、マンハッタンの街の息遣いが心地よい。
未公開シーンとNG集は作品世界に膨らみをもたらしてくれる。