ソダーバーグの
ソラリスは、タルコフスキーという監督の作品のリメイクであるわけで、本家の映像がどちらかといえば物語の核心部分を曖昧にしておくことで成り立っているのに対し、ソダーバーグの演出は、登場人物の心理でさえ、観客がそれを手にとって、その重さを肌で感じることができるようなリ
アリティーが映像に刻み込まれています。それゆえに、主人公の悔恨と失われたものを取り戻すために彼が選んだ決断の切迫感が伝わってきます。すばらしい音楽センスと完璧にコントロールされた色彩、ソダーバーグの魅力が余すところなく発揮された作品です。
半分ほどの試し読みの後に結末が気になって購入しました。
前半ではSF的なジュブ
ナイルやライトノベルらしい切り口で、登場人物の成長や関係性の展開を楽しませてもらいました。
が、後半を読み切ってしまうと、前半はそれこそ登場人物におけるキャラクター性の導入に過ぎないものとなっていました。
本書に付けられていた帯には"絶望率100%"の文字が目を引き、「衝撃の深海クリーチャーパニックアクションノベル」というコピー。まさにその通りと言った所です。
後味がいいとは言えませんが、何も知らない方がこれを読んでも情報はしっかりと読み取れますし、細かく設定された要素は非常に新鮮です。
カラーピンナップからモノクロの挿絵に至るまでも深みがあり綺麗で、視覚的にも楽しめました。
結末の展開に暫く落ち込んでしまったので☆を-1しましたが、読む事自体損ではないと思います。
続編があれば買ってみたいです。
1972年公開の「惑星
ソラリス」はSF映画の古典中の古典といえる作品ですが、時を経ても決して色褪せない名作です。
映画冒頭、心理学者クリスの故郷が現れ、広い池の揺れる水面と水藻、緑の樹木と馬と
犬、そして、晴天にも拘わらず陽光
の中に突如降り注ぐ雨と雷、屋内に落ちる激しい雨漏り、タルコフスキーお得意の郷愁シーンですが、このイメージは後の映
画「ノスタルジア」において増幅され狂気の世界に誘います。
惑星
ソラリスを周回する
宇宙ステーション「プロメテウス」から、
ソラリスの海に向かってX線照射実験を行ってから、知
性を持つ生命体そのものである
ソラリスの海が乗組員の記憶の一部を物質化するようになり、罪の意識から具現化された物質
は、子供であったり、亡くなった妻であったりしますが、この辺りは1956年公開の「禁断の惑星」の潜在意識が増幅された怪
物イドにも似ています。
このイメージが具現化された物質(人間)は、分析の結果、不安定な中性粒子ニュートリノから組成されていて、
ソラリスの磁場でこの粒子が安定していることが解りますが、この現象が
ソラリスからの乗組員に対するプレゼントなのか、それとも
罰であるのかが解らずクリスは苦悩します。
クリスは宇宙船に現れた妻のハリーは10年前に死亡したこと、
ソラリスが創りだしたニュートリノであることは理解してい
ますが、一個体のと言うよりは一人の人間として深い愛情を持って接しますが、この切ない場面こそ、この映画の白眉と言え
るものでしょう。
個人的には、この映画を視る度に、形態は問いません、遠く離れコミニュケーション不足であった亡き父と思う存分話をし
てみたいという衝動に駆られます。
そして、1988年公開の邦画「異人たちとの夏」や2009年公開の「月に囚われた男」等は、この映画が下敷きになっているよう
に感じてなりません。
やがて、クリスは物質体に対し妻ハリーとして感情を抱いて接触しますが、物質体ハリーもクリスへの愛情、そして、物質
化してクリスを苦しめる罪悪感から、クリスに別れの手紙を残し、そこには「もう(物質が)現れないよう伝えます。」と書
かれていて、その後、二度と物質が現れなくなります。物質体ハリーの感情は
ソラリスの感情であったのです。
物質化した妻ハリーが、二度と現れないかも知れないと悟り、このまま、妻を待って
ソラリスにとどまるか地球に帰還する
かクリスは思い悩みます。
妻を形成する物質がクリスが人類愛を悟ったというクリスの脳電図を
ソラリスの海に送ったことにより、
ソラリスはようや
く人類を理解し始めたかのように変化が現れ、
ソラリスの海に島が出来始めます。
そして、クリスはいつしか映画冒頭に現れた懐かしい故郷の池、緑の樹木、
犬等が走り回る庭のある故郷の家に辿り着き、
家の中を窓から覗くと、激しい雨漏りの滴りの中に父親を見つけ、玄関入口で父親にひざまづきます。
やがて、カメラはパンニングされ、その家屋や庭、池からだんだん遠ざかり鳥瞰していくと何とクリスがひざまづく故郷は
ソラリスが海の島に創り出した物質だったという衝撃のエンディングに震撼を覚えます。
この不可解で衝撃的な人知を超えたラストは何を意味するのか、難解な映画ですが、このラストは
ソラリスが人類を理解し
得たと考えても良いのかもしれません。
素晴らしい映画です。
輸入盤に日本語のカバーをつけただけです。
ボーナス・マテリアルには日本語字幕ありません。
字幕を付けられないのなら解説書などを封入するべきだと思います。
他の業者で再発してくれないかしら。