本作で
アンジェリーナ・ジョリーはアカデミー助演女優賞をかっさらいました。主役
ウィノナ・ライダーを圧倒的な存在感で圧倒し、不動の地位を築き上げたのが本作です。アンジー姉さんの迫真の演技は必見。ウィノナも繊細であやうい心を丁寧に描いています。
本書は境界性人格障害と診断され、2週間の入院をすすめられたのにもかかわらず18歳から約2年もの間、精神病院に入院した著者の回想記です。
精神病院での入院生活において他の入院患者とのエピソードが複数にわたり紹介されていますが、どこか親しみやすく冒険ファンタジーのような
タッチで描かれています。
しかし、要所要所で精神疾患や思春期の若者といった側面から現実的な厳しさも描かれており、終盤に至っては社会に何かを大事な何かを訴えるような重々しさが感じられます。
果たして著者は本当に精神疾患により精神病院を入院する必要があったのだろうか!?とも思える内容です(個人的な答えはYesだと思いますが・・・)。
著者が精神病院を“パラレル・ユニバース(隣にある別世界)”と表現して外界である日常社会との対比をしていましたが、彼女たちが最高度閉鎖病棟を訪ねたときの描写が精神病院の中においても“パラレル・ユニバース”が存在するように描かれていたのが印象的です。
最後に、本書は
アンジェリーナ・ジョリーが
アカデミー賞助演女優賞を獲得した“17歳のカルテ”の原作になっています。
ウィノナ・ライダーが主役で、ジャレッド・レトやウーピー・ゴールドバーグも出演しています。
この映画での
アンジェリーナ・ジョリーの評判は聞いていたけれど、本当にいい。
とても魅力的だったし意欲をもって演技しているのがわかる。この役をこんな風に自然に身についたもので表せる女優さん、他にあまり思い当たらない。もっと小奇麗になってしまうか、技巧を感じさせるかになるんじゃないだろうか。
実はこんなに有名俳優が沢山出てくる映画だとは思っていなかったのでウーピー・ゴールドバーグが出てきたときにはああ、そういう映画ね、と思ってしまった。
原作の雰囲気がどのようなものだったのか読んでいないので分からないけれど、周りを固める俳優達をもっと軽くしたらこの作品はまた全く変った魅力を持ったのではないかと思う。
精神の病について広く考えさせたいという気持ちがこのキャスティングに現れているのなら、成功なのかな?
『カッコーの巣の上で』みたいなものも少し想像していたのだけれど。
精神病とは特別な事ではなくて誰にでもある一面が拡大されただけ、と最後にスザンナが言っているが、本当にそうだ。よほど重い症状の事はわからないが…。
誰しもの心に闇や疵はあって、それに押しつぶされないように闘っているんじゃないだろうか。
かと言ってじゃあ病気だと思っているのはただの言い訳や逃げか、といったら決してそうじゃない。風邪と同じように、こじれてしまったらやっぱりそれはお医者さんにかかるべきなのだろう。
日本ではまだどうしても精神の病を特別視する傾向にあると思う。
だからこそその病気に逃げ込まずにいられるひともいるだろうし逆に認めず、顧みず、どんどん病にはまり込んでいってしまっている例もあるのかもしれない。特別な事でも絶望する必要もない、でもそこにはやはりプロの力が必要なのかもしれないから、認識する必要はあるのだろう。
ウィノナ・ライダーは少年みたいで、透明感があった。