30年! 本当に長〜い間待っていたCDがようやくリリースされました。
このアルバム、1980年発売で、CDが普及し始める直前くらいにLPで出された
ものですね。これが、白季千加子さんの最終アルバムになったと思います。
彼女のアルバムは、LPで数枚もっていたのですが、不覚にも引っ越し時に
大きすぎるプレーヤーと一緒にすべて処分してしまいました。いろんな音楽が
急激にCD化していた時期でした。CDを買い直せば、と考えていたのです。
彼女も、もし、あと数年活動を続けていたら、これらのアルバムも順次CD化
されていったのだろうと思います。しかし、実際には30年の歳月がたちました。
もう少し早くCD化できただろう、との思いもありますが、過去の貴重な音源が
このように市場で簡単に購入できるようになるのは大変ありがたく、また
文化継承の視点でも重要なことだと思います。
彼女の歌は、音楽がもっと人々の生き方に影響を与えていた熱い時代の息吹きを
現在に伝える、30 年の時間を生き抜く力があるように思います。
彼女の歌は、ブレッシングの時間がちょっと長めの抑制した歌い方で、
ぼそぼそっと歌う感じもあるのですが、間の取り方が絶妙で
声質の良さもあって、とても心に浸透していく力があります。
曲は日常のほんの1シーンを切り取って淡々と歌い、聴く人に共感と癒しを
もたらす、そんな良さがあると思います。
お勧めの好きな曲を2曲あげると、まずは、トラック 8
「真夜中に眠るあなたと一杯の
紅茶」。
雨が降る夜の室内。彼が先に眠ってしまい、ちょっと手持ち無沙汰な女性の心理描写。
「いらだっていたあの私がうそのようね」と歌う中に、新しいパートナーとの生活に
ゆったりと満たされている女性のじわっとした幸福感が描き出されます。
そして、トラック 10 の「ステージ・シンガー」。彼女がもっとも得意な
愛を語るスロー
バラードです。この曲の歌詞の解釈はいろいろ可能でしょうが、
多数の人目の中で「演じる私」とひとりのときの「本当の私」という、
女性シンガーソングライターの根源とも言えるテーマのひとつを扱っています。
ステージが終わり聴衆が去った後の情景を映像的に切り出して、
ステージの「華やかさ」と後の「孤独」を対比的に描写していきます。
(私は、こんな時は、何か暖かい食事を差し入れたくなりますね。)
この曲は、伴奏も素晴らしいです。
ステージでは裸足だったという彼女。そのスタイルは、鬼束ちひろさん、
中島美嘉さん、一青窈さんなどと似ている、というか時代的に先輩格ですね。
曲想はそれぞれ違いますが、何か共鳴するところがあるように思います。
このCD、若い世代にもぜひ聴いてもらいたいです。