この本は、思ったほど文章が多くなく、写真中心で見易いと思います。インド石窟寺院遺跡の写真集といった感じです。写真のクオリティーの高さ、豊富さもすごいのですが、この本で解説していらっしゃるのが、インド文化史研究の第一人者、立川武蔵さんで、キレのある分かり易い説明が詳しく書かれています。インドの宗教や文化を、長年あらゆる角度から研究されてきた方の解説なので説得力があります。仏教、ヒンドゥー教、ジャイナ教、三者三様それぞれの壁画や石窟彫刻の意味について、理解を深めながら写真を見ていく事が出来ます。インド宗教芸術を深く探求し、また楽しみたい人にお勧めです。
ナクソスの「日本作曲家撰集」初期のころのリリースがこのCDです。芥川也寸志はその出自や活躍ぶりは知られていましたが、その作品そのものは意外に知られていないという雰囲気の作曲家であります。このCDに収録されている作品が芥川の仕事を代表するものでは必ずしもありませんが、ある事情で芥川が若いころに作曲した「交響三章」はある日突然有名になりました。それは「交響三章」の第三楽章の冒頭が1980年ゼネラル(現富士通ゼネラル)のテレビ(「ザ・マルチ」という商品名)のテレビCMに使われ、その豪放磊落な響きは一体なんて音楽なんだ?と当時話題になったわけです。師匠の伊福部昭の音楽が
ロシア風味付けになったような気分の音楽とでもいったらいいでしょうか、後の芥川の音楽(例えばエローラ交響曲)に比べると必ずしもオリジナリティーがはっきりせず、そしてまた「八つ墓村」に代表される劇伴ほど大衆的でわかりやすいわけでもない。それが今日ではテレビCMに使われたために代表曲になっているとすれば、後世に芥川の評価がさがってしまいか心配ですが、芥川也寸志という人がどんな人なのかを理解するのにはいい材料なのかもしれません。