初期マザーズ(フランク・ザッパ)や13thエレヴェイターズ(ロッキー・エリクソン、トミー・ホール)、レッド・クレヨラ(メイヨ・トンプソン)の諸作と並ぶ60年代サイケの神がかった古典的名盤。特にアーサー・ブラウンのこの作品が後のピンクフ
ロイド(シド・バレット)やドアーズ(ジム・モリソン、レイ・マンザレク)らに与えた影響は計り知れないものがあると思う。
個人的に彼らの「ファイヤー」は、13エレヴェイターズの「ユーアー・ゴナ・ミス・ミー」、「スリップ・インサイド・ディス・ハウス」やピンクフ
ロイドの「シー・エミリー・プレイ」、「星空のドライブ」と同じく、大好きなサイケデリック・ロックである。
作品のキモは、ズバリ、天才アーサー・ブラウンの一体何オクターブ出せるのか、と驚嘆せざるを得ない「多重人格者的」超人ヴォーカルと、ヴィンセント・クレーン(後アトミック・ルースター)弾くところの変幻自在なキレキレのオルガンであろう。
またギターではなくバックに重厚なブラス群を多用しているサウンド作りがドラマチックで非常に効果的である。このあたりが他のサイケバンドとは一線を画す重要なポイントだ。
プロデューサーはキット・ランバート、共同プロデューサーとして、ピート・タウンシェンドが名を連ねている。また後にELP入りすることになるカール・パーマー(ドラム)参加でも有名な作品だが、この時点ではまだまだ彼は地味である。
通して聴いてみて、エキセントリックかつ退廃的なフレーバーな作品だが、実にモダーンなサウンド・センスを感じさせる、意外にもファンキーな名盤である。