クラスのいじめられっ子を、「オレ」が人気者にプロデュースするお話。
その方法はやや安直な気もしますが、小説的には確かに面白いです。
題名と序盤の展開で面白い話に思えるのですが、話が進むうちに段々と考えさせられる内容へとなっているような気がしました。
それは主人公である「オレ」が「桐谷修二」を演じている事。多かれ少なかれ誰もが実生活において、他人に対し、
仮面をかぶって偽りの人格を演じている部分は絶対にあると思う。ただここまで徹底的に演じてる人はいないと思いますが、自分はどうなのかと問われているような気がして、すこし考えさせられました。
タイトル、本の装飾とライトなイメージですが、ラストの落ちといい、ちょっと悲しい物語で考えさせられる内容です。以外にヘビーなお話です。
スペシャルで作られ収録された曲は9曲。放送時のイメージが再現された歌詞入りの組曲は秀逸。訳詩が載っています。(女王の教室スペシャルの曲はドラマ自体本編よりダークな内容なのでどちらかというと恐い感じ。)テレビシリーズの「あおげばとうとし」の
フルートが心地いい。今回は「野ブタ」「負け
犬」なども入って作曲者の色が強い。「こんな曲もつくるのかなかなかいいなあ」と聞き入っていました。
ボーナストラックと併せて休日のひとときのBGMにGOODです。「野ブタ」はコミカルな楽曲。「負け
犬の遠吠え」は聞き易いカフェのBGM風。最後はラストプレゼントで穏やかに終わります。
ボーナストラックにボリュームがあるためか「女王の教室スペシャル」色が少ないのでそれだけに染まりたい人には物足りないかも。o.s.tと併せてお聞きください。
勢いのある文章ではある。ところどころ首を傾げながらも、結局一気に読んでしまった。 だが、“「野ブタ。」を読んで笑いなさい。”という帯の言葉に立ち返ってみる時、いろいろ考えてしまった。笑ってすませられることではないはずだという思いが、私の中にあってそれを追い出すことができない。
主人公の桐谷修二の自意識過剰な言動は、多かれ少なかれ誰にもあることとはいえ、他者に対する優しさも思いやりも感じられない。
学校、教室という場所は確かに息苦しい、特殊な空間だ。来る日も来る日も同じ連中と(教師も含めて)過ごすなかで、自ずと各人の立場やテリトリーが決定されてしまう。
一度張られたレッテルは容易にはがせない。だからこそ、皆慎重に自分に不利益にならないように、尚かつ他の人には入ってこられないように仲良しグループを作る。
居場所がなくては“まあまあ”“フツー”の高校生活が送れないから。
しかし、こんなんじゃないだろ!?こんな高校生ばかりじゃないだろ!?という気持ちをおさえられない。
野ブタ。をクラスの人気者に仕立て上げ、要領よく立ち回る修二は気がつかないのだろうか?程度の差こそあれ、誰もが相手に、こうあって欲しいんだろ?オレって(あるいは、私って)という煙幕を張りながら、その場の会話と空気を紡いでいるのが。
詳しくは書けないが、修二は成長しない。ラスト30頁も、予定調和にすぎない。
「こっちを見ているようだった。」というフレーズで、修二の身に起こることが透けて見えた。演じ続ける修二より、野ブタ。の必死さが馬鹿げていても好きだ。
ラストは修二がただリセットしただけなのか、あえて自分に試練を課しているのか、人によって180度理解が別れるのではないかと思われる。
恋愛・イジメ・(熱血)教師等をテーマとした既存の学園物とは明らかに一線を画す、独自のテイストのドラマ。しいて主題を1つあげるとしたら友情かな。けれども決して偽善的でも押しつけがましくもない。
一見人気者だが、実際は他人に対してまともに向き合わず、どこかシニカルな修二に、遠い日の自分を重ねる人は私だけではないはず。信子や彰とのかかわり合いを通じて大きく変わった修二がまぶしく、そして今となっては永遠に取り戻すことのできない高校時代という時をたまらなく愛おしく感じさせてくれる逸品。
恋愛ものではないのに胸がしめつけられるようなせつなさとホロ苦さを感じるのもこの作品ならではの魅力。
「青春アミーゴ」ばかりが目立ちがちだが、全編に流れるどこか懐かしいBGMや東京下町(門前仲町や月島あたり)の美しいロケ映像にも癒される。
ジャニーズ系のキャストや原作の白岩玄の小説「野ブタ。をプロデュース」の軽い印象だけでこのドラマを敬遠していた人は、だまされたと思って1度見て欲しい。
スペシャルや続編の待望論が根強いけど低質なものは絶対作ってほしくない。
因みに38歳にして生まれて初めてドラマのDVDBOXというものを購入しました。