英国のフォークバンド、チューダー・ロッジのアルバム。
SPIROGYRA、MELLOW CANDLEとともに英国フォーク三種の神器とされる本作であるが、
以前聴いたときには、あまりにも牧歌的すぎて好きになれなかったのだが、
2500枚限定というリ三面開きジャケのマスターバージョンで購入し直して聴いてみる。
艶やかなアコギの音色に美しい女性Vo、そこに加わる男性Voも優しいコーラスを乗せる。
音質がよくなっているせいか前に聴いたときよりもサウンドに広がりが感じられ、
全編がほとんどアコーステイックながらピアノや
フルートの音色もじつに美しい。
しっとりとソフトなフォークアルバムとしては、やはり屈指の作品であると思い直させられた。
まだ未聴の方はぜひリマスター盤で、うっとりとしながら耳を傾けて欲しい。
”奇跡の名盤”とか”稀有の名作”という言葉があるが、どんな言葉を使ってもこの作品の素晴らしさを表現するのは難しい。
本作はすでに国内外で何回かCD再発されていて、レビューも書かれているが、今回のEsotericからの再発盤は残念ながら6面開きの変形
ジャケットは再現されていないが、
ボーナス曲(1曲)と16ページに亘るブックレットには数々の未発表フォトがあり、大きな魅力になっている。
ボーナス曲"The Good Time We Had"は元々シングルB面だった曲でアルバム未収録。15年ほど前に1度別のCD"It All Comes Back"に収録されたが、本作の
ボーナス曲としての収録は確か初めてのはず。
本作は英Vertigoから1971年に出され、英国のグループに分類されているが、
紅一点のAnn Steuart(vo,fl,g,p)は米国人であり、Curved Air"Phantasmagoria"にも1曲参加している。音はプログレというよりモダン・フォークに近く、親しみやすいメロディの曲が多い割に聴いていて全く飽きがこないのは実に不思議だ。
本作を初めて聴いたのは40年近く前で、当時よく聴いた愛聴盤の中には、すでに売却してしまったものや、棚の奥の方にずっとしまいこんでしまったものもあるが、本作は今でもすぐ手の届く場所にあり、実際何度も聴いている。(英国オリジナルLPは変形
ジャケットという事もありCDが出ても価格は5ケタから下がる気配はないようだ。)
なおTudor Lodgeはその後再結成され、アルバムも何枚か出されているが、3人のオリジナル・メンバーの作品はこれ1枚だけであり、後のアルバムとは曲の完成度が全く違うので別のグループと考えた方が良いかもしれない。
アコースティック・ギターの透明感が凄い。
スライド音まで拾った美しきアルペジオが前面に出てくる。
とても70年代のアコギとは思えない、
実に美しくクリアで透明感なのだよ。
女性1名、男性2名の抜群のハーモニーが売りで
ジュディ・シルやローラ・ニーロのような
透明感と存在感がある女性ボーカルと
甘めの男性コーラスのハモリも文句なしに素晴らしい。
「ドリーミーでアコースティックなハウディ・ムーン」
と言えばわかりやすいかな。
そして
フルートを多様した幻想的な世界観と
ジャズ、クラシック要素も取り入れたお洒落なサウンド。
まさにソフト・ロック。
そこに透明感のあるアコースティック・アルペジオと
抜群のハーモニーの応酬。
もともと僕は60年代ソフト・ロックが大好きなんだけど、
時代なのか、70年代になるとソフト・ロックと言われる
ドリーミィでジャジーでメロウなハーモニー・ポップは
一気にいなくなっていく。
そんな中、このチューダーロッジは
60年代ソフト・ロックにアコースティックの美しさと
70年代特有の牧歌的優しさを絶妙のバランスでとりいれた
正に自分好みのパーフェクトなサウンドで、
出会ったときマジでびっくりした。
なんだコレは、と。
こんなの有りなのか。
70年代にもソフト・ロックがあったのか、と。
しかし、ジャケが真っ黒でB級ハードロックみたいで
実にダ●い・・(苦笑)
もっとジャケも良ければ評価されたのにね。勿体な。