その曲を聴いた最初の演奏の印象というのは、何か特別な形で残ると思う。その演奏が良きにつけ悪しきにつけ基準点みたいになるのではないだろうか。私の場合、この演奏が最初に聴いたフォーレの五重奏曲だった。当時買ったものは五重奏曲が1枚には入っていなくて閉口したものだったが、演奏はエラートのこの演奏だ。作曲者フォーレのその時の実年齢に関係なく、きらめくような輝かしい若さと、晩年の沈思とが、一度に聴ける作品だ。両方とも素晴らしいのだが、私は二番の方の冒頭を聴くたびに、何か涙ぐまずにはいられないような気になる。素晴らしい作品と演奏である。
フォーレやシューマンを得意としているピアニストだけあって、繊細で的確に弾かれている。
変な抑揚がついておらず、丁寧な曲に仕上がっているので、聴くだけでも素敵なCDだけれど、フォーレのピアノ曲を練習している人にも参考になる1枚。
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