私はこのオペラに関してほかの音源を知りませんので、このDVDについての主観的評価です。
それは衣装がきれいで、地味ながら音楽が素晴らしいということです。
話は「エリザベス」以前のイングランドで、エリザベスを知っている方なら
すぐにピンとくる内容です。
サンサーンスがイングランドを舞台にしたオペラを書き、演出は英国の堂々としたもので衣装は
フランスのテイストが入ったオペラといえばわかりやすいでしょうか?
第二幕の最後にヘンリー8世と愛人(アン、エリザベスの生みの親)の蜜月のシーンを象徴するようなバレエは
全く、音楽のみで男女二人でなされる踊りは、それ自身見ごたえもあり、意外と長い時間です。これはおまけ的な要素で
3幕の婚姻無効の裁判のキャサリン(
スペインから嫁いできたお妃)の
アリアはとても美しいものです。このオペラ全体に
キャサリンに関してはすごくきれいな音楽が割り当てられており、
ヘンリー8世についてもCMで使えそうな、隠れた名曲があります(これはあくまで主観)。
そして最後の4幕のフィナーレでのアンを試すときのハープと合唱の一体となるところから三重奏にかけてとても良い。
実際に、全体のバランスの良い作品であり、演出は飛びぬけていると思いますし
照明やカメラアングルはずば抜けており、当日客席で見るよりもうまくまとめられている気はします。
このオペラは
イングランドの歴史(イングランドと
スペイン)を
フランスの作曲家がまとめ上げたところに
独自性があるのかもしれません。英国の作曲家ではこうはいかないと思わせる何かがあります。
題名で引くというより、積極的に購入されて見ることをお勧めいたします。
映像の解像度、音とともに損はないと思います。オペラにおけるバレエとしては量は多いほうだと思います。
フランスは、
イタリア・
ドイツと並ぶオペラ大国のはずですが、では
フランスオペラの代表作を挙げよと言われると、ちょっと困ってしまいます。『カルメン』や『ホフマン物語』は個性的すぎるし『トロイア人たち』は生真面目すぎるし大作でありすぎるし…。そんな時心に浮かんだのが、この『サムソンとデリラ』です。音楽のつくりの点でも、題材から言っても、かなり典型的・代表的な
フランスオペラと言えるのではないでしょうか。このディスクにおさめられた上演は、メトロポリタン歌劇場のもので、いつもながらの大規模で豪華な舞台装置、レヴァインの堅実な指揮で、この作品の魅力があますところなく表現されています。オペラ本体の終演後、この舞台で長年活躍してきたドミンゴに対する表彰式の場面が収録されており、これもなかなかの見物です。無論、本編中でのドミンゴの歌唱も素晴らしいものです。このディスクの発売を機会に、
フランスオペラのファンが増えてくるかもしれない、と予感させる内容です。