塩野七生の「
ローマ人の物語」で日本でもわりと
メジャーになった、ハンニバル、スキピオ、アルキメデス、といった英雄・著名人が登場する時代。「ヘウレーカ」で描かれているのは、第2次ポエニ戦役時代に、シラクサ市が
ローマからカルタゴに寝返ったときの
ローマ軍による、シラクサ再征服の攻防ですが、本作品は、一般にこのような英雄時代にふさわしいような明るいものではありません。登場する人物の中で特別な人間は、ハンニバルとアルキメデスだけで、主人公ダミッポスは能力は高いが、まぁ、普通の青年の範囲。
アルキメデス発明の兵器が
ローマ軍を苦しめはするが、主人公は、結局恋人もアルキメデスも救えずに終わる。一件、歴史という大きな流れの中で翻弄される個人を描いた作品のように思えてしまうかもしれませんが、本作品は決して、「個人の可能性」を否定ているものではありません。彼の行為は、結果的とはいえ、戦勝軍隊による無用な敗戦市民の殺害を防ぐ一因にはなっている筈です。少なくとも敵方の
ローマの司令官には評価されていることは間違いありません。
彼が恋人とアルキメデスを救えなかったことのみに注目し、自分の可能性を否定して、腐ってしまうかどうかは、本人次第でしょう。主人公が、いつかそのことに気が付いて、前向きに生きていって欲しいと思います。
ラストの主人公は、どうみても人生に俯いてしまっているため、読後感はかならずしもよくはないかも知れませんが、「希望はある」、それをどうみるかは本人次第である、とい風に考えたいと思います。
岩明氏はアフタヌーンで「寄生獣」を描いた名家。
絵がなんとよいですね。
今回の作品は紀元前の
シチリアを舞台に
ローマから離反しようとするシラクサと
ローマ軍の戦いを
背景に主人公たちの人間模様が織り成されます。
アルキメデスも登場し知的な雰囲気も。
主人公はスパルタ人、世の中を覚めた眼で見ていますが、
勇気ある青年です。
ラストは少し悲しい。
でも歴史の無常観を味わうには
この作品をぜひ。
岩明 均さん。本当に素晴らしいです。私の中では、恐らく現在のCreatorのなかで、
日本の中では最高峰に位置している作家です。
その評価の理由がこの一冊です。素晴らしい。
佐竹家の逸話は、今の秋田市の成り立ちを知るのに、眼から鱗状態です。家老の渋江の活躍。
知恵。勇気。佐竹義宣の英断。
上杉謙信の逸話に憧れる旧家老たちもまた魅力的。秋田市を
通ってみれば分かります。二つの街の融合であることが。
更に輪をかけていいのが、疋田文五郎を描く剣の舞。バガボンドや、あずみ、他の剣豪ものを
読んで、私にとって謎の人物であった上泉伊勢守。その弟子であった疋田文五郎の
「悪しゅうござる」。ひところの私の口癖でした。描かれる人物一人ひとり、全てが主人公です。ドラマです。
寄生獣に始まり、その凄さの割りに評価されなかった七夕の国。しかし、ヘウレーカにも
痺れました。今はヒストリエの新刊が出たばかり。岩明ワールドに魅せられています。
レビューアー達の評価もやっぱり高く、本当に嬉しいです。
一つ一つ、とにかく大事大事に作っていってください。
いろんな評価の人がいると思います。対象としているところは小さいのですが、
私の中で、最高の一冊です。
お勧めです。