俳優さんのファンなので流し見るつもりで購入しましたが、出題編、データを見返せる捜査ファイル、そして解決編となっている編成の妙で、ついつい推理に熱中してしまいました。
演技のうまい俳優さんが揃っているのでそれだけでもおもしろいですが、どうせなら推理しながらの方が、なお楽しく見られます。解決編の仕立てが上手なので、ミステリマニアでなくてもわかりやすくておもしろいと思います。
橋本さとし、入江雅人、
山口紗弥加、村杉蝉之助ほかの各氏も出演されています。
有栖川有栖好きなら一度は見たいビデオ。
巷では意外と良い出来と評判でしたが、お気に入りの一品とはならなかった私。
ですが、若干の違いはあるものの、ほぼ原作通りにストーリーが進むので安心して見ていられました。
前半30分に前巻のダイジェストが入っているのでお得感あり。
また、江神役の
香川照之さんは演技が上手いとは言えないまでも、実際に頭の良い彼だけに知性を感じさせられ、冷たい口調が原作の江神さんとおりでした。
暇つぶしにと言っては失礼ですが、ジャパンミステリー好きには良い作品です。テレビのサスペンスドラマよりは数段見れます。
聞いてみての率直なところは、「甘ったるい」
やはり若い人向けなのでしょう。しかも女性ファン。
声もさることながら、ブックレットもそんな印象。ドラマとしての内容はとてもきちんとしているので、原作を知っている方は「遊び心」という点で楽しめるのではないでしょうか。
怪しい関西弁もわざとそうしているひねり技。個人的な思い込みかもしれませんが、原作ファンも聞く、を前提にするとこんなアレンジも面白いな、と感じるところで3点。5点満点にしたいけれど、それをするとおべんちゃらで感想にならないので、やはり3点止まりにしておきます。
妃は船を沈める (光文社文庫)
妄想とも現実ともつかないような言葉を次々に紡ぎだす男・山沖の行方を
火村と
アリスが協力しながら探し出す人気作『ジャバウォッキー』
美しい英国式庭園を舞台にした宝探しゲームの顛末を描く『英国庭園の謎』
火村が"傷ついた"という奇妙な事件について
アリスが語る『
暗号を撒く男』
ロックバンドのギタリストが残した"Y"のダイイングメッセージをめぐる『あるYの悲劇』
一枚の紙幣が被害者の意思を離れて動かしがたい証拠となった『比類のない神々しいような瞬間』
火村シリーズといえば印象的な
暗号が数多く登場するシリーズではありますが、
その中から(すでにビーンズ文庫版に収録されているものを除く)
作者選りすぐりの5編が収録された
暗号ものの選集です。
事件を解決へと導く
暗号もあれば、逆に混乱させるような
暗号もあり、
死に際に残されたもの、あらかじめ作られていたものなど
さまざまなバリエーションが一度に楽しめるおいしい一冊だと思います。
ビーンズ文庫版のうれしい点のひとつでもある作者によるあとがきには、
ミステリファンならうんうんと頷いてしまうであろう
「
解読する過程が意外なものであば、結末は必ずしも意外なものでなくてもいい」という
暗号もの、ひいてはミステリそのものへの作者の見解が書かれていてこちらも必見。
麻々原絵里依の手による挿絵も作品の雰囲気を壊すことなく調和していて、
少女小説レーベルながら完成度の高い傑作短篇集だと思います。
唯一残念な点といえば、これは前作の『密室の研究』のときにも感じたのですが
初期の長編作品がビーンズ文庫版になっていないために
編集者の片桐、女流推理作家の朝井などのレギュラーキャラクターと
火村・
アリスたちとの関係がわかりにくいところでしょうか。
また火村が犯罪をどれほど憎み、どれほど過去の殺意に苛まれているかなども、
いずれも過去の長編に深い描写があるために
ビーンズ文庫版だけしか読んでいない人には「?」かもしれません。
キャラクターや設定はあくまでもミステリのエッセンスに過ぎないため、
謎解きをメインに楽しむには重要なポイントではないかもしれませんが、
物語性も楽しみたいという人にはその点が不親切かなと思います。
今後もビーンズ文庫での展開があるなら
シリーズ初期の長編もぜひビーンズ文庫化してほしいです。
設定は古くなっても、謎を解く楽しみはけして古びることはないのですから。