その昔「がきデカ」という漫画で人気を博していた山上龍彦が小説家に転身して書いた短編集。
漫画的な話がちゃんと小説として描かれていることに、まず驚いた。 片手間でなく真摯に小説に向かってるんだなぁという印象。 ほどよく面白く、ほどよく上手い。漫画で感じたような下品さもあまりない。 その分、勢いが弱い気もして強烈な印象は残らなかった。
可もなく不可もなく、無難といった感じの小説です。
まず、本作が少年マガジンという少年マンガ雑誌に連載されていたという事実に、今更ながら当時の出版社の英断を称えたい。
今、こんなマンガを掲載する勇気のあろ出版社はないだろう。
さまざまな問題が提起されている作品である。
不快感も感じるだろう。
それは、その提起されている問題ゆえだ。
ストーリーは、中盤までは主人公弦を中心として進んでいく。
しかし後半、様々な思惑を秘めた幾人かのストーリーが複層的に進行すると、まさにポリティカルなものが前面に出てくる。
打ち切られたのもうなずける、かなり各方面からの横ヤリが入っても当然という状態になっていく。
おそらく著者は、かなり意図的に、腹をくくって掻いていたと思う。
リアルタイムで読んでいた中学生の私にも、これはやばいんじゃないかと思わせたものだった。
今、改めて読み返して、現代もあの当時も、世界と日本の状況はちっとも変わっていないことに愕然とさせられ、また、考えさせられた。
本作当時とは、冷戦が終わり、ベトナム戦争が終わり、東西ドイツが統一されるなど、世界は大きく動いているはずなのにである。
本作がこのような体裁で再び刊行されたことには、何か意味があるのだろうか。
グローバル化が進み、ネット社会となっても、世界はそれほど変わってない、いや、むしろ悪くなってるんじゃないか。
本書を改めて読んで、そう思った。
普遍的に、多くのひとに読んでほしい作品である。
著者には、もっとこの方向の作品を描いてもらいたかったが、おそらく相当の圧力があったのだろう。
著者はその後、ギャグに、さらには小説にと逃亡してしまった。
本作をめぐる裏話を聞いてみたいものであり、また本作の続編がもし可能であるなら、ぜひ読みたい。
本書の持つ意義は大きい。
歴史的な名作であり、まちがいなく著者の代表作である。
お気に入りの作家さんの作品が一番つまらなかった。いろんな方の作品が短期間で読めるのは、お試し感があっていいと思いました。次回作品のセレクト参考になります。
中島らも、桐野夏生、東野圭吾など有名作家の短編小説がたっぷり30編入っているのでお得な感じです。一編、一編に異なる雰囲気があって飽きる事なく一気に読んでしまいました。超短編ですが密度が濃いものだと思います。私は今までに読んだ事の無い作家の作品を読みだしたいと思った時に参考にしています。
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