戦争ジャーナリストとしての名声や、型にはまった結婚生活、そして醜い現実生活から逃れ、全く別の男になりすましてさすらいの旅を始めるデビット(ジャック・ニコルソン)。大衆が期待するような記事を書いたり、予め答えの用意されたインタビューに嫌気がさしたデビットは、愛の不毛などという勝手なレッテルをマスコミに貼られ、いつしか大衆が望む作品を撮ることを期待されるようになった巨匠アントニオーニの姿とだぶって見える。
文化革命時代の中国の裏の姿をフィルムにおさめようとしたこともある、アントニオーニのドキュメンタリー作家としての批判的な目も健在だ。デビットがなりすました人物がゲリラ組織への武器密売人であったり、追悼番組作成のためデビット自身が取材したテープを編集するシーンに、実際の銃殺を撮影したドキュメンタリー映像を使ったりしている。
そして特筆すべきは、ラスト7分間の長回しによるシークエンスだ。デビットが昼寝しているホテルの部屋を映したカメラが、窓の鉄柵をすり抜け(?)ホテル前の広場を巡回し、再び部屋の中を映し出す。何者かに抹殺されたデビットの亡骸を見た、現在の女(マリア・シュナイダー)と過去の女(ジェニー・ラナカー)の対照的な反応が印象に残る。それは過去のスタイルに別れを告げ、新たなステップを踏み出そうとしたアントニオーニ自身の姿と重なっていたにちがいない。
五人の詞はみなことばかずが少なく、行間をきかせるうたばかり。だからその色んな瞬間を切り取ったうたに、ひとつひとつ耳を傾けるように、うたのシンプルな力を味わう作品です。
先ず驚いたのは元ムーンライダーズ、鈴木のアートな歌詞世界。ことばが非常に生き生きとして伝わってくるので、まるで絵本のように絵と物語が印象的です。
一方大貫の歌声はいつ聴いても涼しく美しいですね。そのこえはことばを透明にします。だからことばかずが要らないのかも。「横顔」「突然の贈りもの」はやはり求心力がありうたに身体を預けたくなります。
「遠い町で」。円やかな響きで深みを醸す宮沢の声。遠くまで思いを飛ばす詞に相応しい悠久の音色かララバイに揺られるよう。奥田と宮沢の対照的な歌い方が混じるのも面白みです。また大貫のうたへ宮沢が挑んだ「Rain」は最初の一声に宿る引力が聴き所。
宮沢と矢野の「二人のハーモニー」が聴けるのも嬉しいですね。後半はインプロビゼーション状態です。そして大貫が主旋の「ピーターラビットとわたし」。様々なうたがうまれるこの企画だから意味を成す楽しさがあります。
奥田のこえはぶっきらぼうだけど最も肩を張らずにうたっているから、不思議とことばの自然さに惹かれます。「ラーメン食べたい」の熱唱は聴き所。もどかしい女心を歌い殴るサビが変り、必聴です。因みに序曲は奥田流の“うた”への切り口。今作の始まりに相応しい選曲でした。
矢野節全開となるラスト。曲を分解し譜割りを斬新に変えるカバー手法で有名な彼女ですが「すばらしい日々」の裁き方も最早ジャズですね。彼女はいつも即興で譜割りを変えるのでこの編曲もこの日だけのもの。他方『ピヤノアキコ』にも収録された「ニットキャップマン」を本家の鈴木がリードでうたうというのはこの作品の貴重な点です。
2枚目
糸井重里のことばに五人がそれぞれ旋律をつけ生まれてゆくうた。この企画の目玉で、シンプルなうたの素晴らしさにささやかな幸せを覚えます。特に最後の大貫。ことばに凛としたいのちを通わせ、名曲が生まれたと本当に思います。
「塀の上で」は鈴木のはちみつぱい時代の曲。うたいつがれてほしい先達のうたです。後の二曲も大貫と鈴木が手を繋いで笑いがこぼれるなど“うた”で結ばれる曲が置かれ、この企画のテーマを象徴していました。
ただ一点、ライヴ音源とはいえかなり録音が悪く、音が散ってしまっている感じです。まあうたに集中すればいつのまにか気にならなくなりますが。
2000年にパイオニアLDC(現ジェネオン)から発売されていたものの
ながらく権利切れで廃盤になっていたのが今回SPEから廉価で再販されるに至りました。
求め易い価格そして特典として加えられた音声解説など、旧盤を圧倒的に凌駕しています。
冒頭の砂漠のシーンから最初の30分間ほどは粒子の荒い画質が少々気になりましたが
バルセローナの場面あたりからは段々と色調も鮮やかになり、全体の画質の統一感には
ややかけるきらいがあるものの、31年前の作品ということを考慮すれば
最新作の高画質作品群や次世代ソフトの水準から鑑みると少々物足りなく思える
かもしれませんがフィルム傷やノイズ等は比較的少なく鑑賞には特に問題ない画質でしょう。
特典としてジャック・ニコルソン単独と脚本家他1名による2種類の音声解説が付いており中でも
ニコルソン氏の音声解説は興味深いものとなっています。31年前の撮影時の労苦やこぼれ話、
想い出を1人で喋りまくっており、怪異な風貌からくるイメイジとは異なる役者としての誠実な
姿勢が垣間見えるようで好感が持てます。以前観た時には気づかなかった
シーンの意図や作品の狙いをアントニオーニが実際に氏に語った時の模様や、
時には氏独自による解釈をその渋みを増した低音でもって述べてくれています。
若かりし頃の声から、往年の声までパヴァロッティの魅力満載!
一曲目から、感動しました。
パヴァロッティの声を聴いていると、他の方の唄に興味が無くなると言うか、、、。
ぶれることの無い低音から高音への声で、凛としたかつ温かみのある声。
多くの方に聴いて頂きたいCDです。
PAVAROTTIはあいかわらず素晴らし。CD商品とししては普通。
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