俳優さんのファンなので流し見るつもりで購入しましたが、出題編、データを見返せる捜査ファイル、そして解決編となっている編成の妙で、ついつい推理に熱中してしまいました。
演技のうまい俳優さんが揃っているのでそれだけでもおもしろいですが、どうせなら推理しながらの方が、なお楽しく見られます。解決編の仕立てが上手なので、ミステリマニアでなくてもわかりやすくておもしろいと思います。
橋本さとし、入江雅人、山口紗弥加、村杉蝉之助ほかの各氏も出演されています。
日経おとなのOFF2011年9月号は、おとなのミステリ案内として70ページ近くの特集を組んでいます。まず東川篤哉さんの「謎解きはディナーのあとで」を例に挙げ、導入、状況説明、問題解決を踏まえた本格ミステリだと解説し、東川さん、辻さん、有栖川さんの鼎談、僕はこんなミステリを読んできたに入ってきます。そして、三者の推薦するミステリが、緋色の研究、奇岩城、三つの棺を始め18作紹介されていますが、日本人の作品には、異論のある方もおられるかなと思います。次いで、ミステリ作家の系譜、基礎用語、このトリックが凄いが紹介されていますが、物足りない方は、成書が沢山出ていますから、そちらをどうぞ!
次に、東野圭吾さんの2大ヒーローの研究として、加賀恭一郎、湯川学のプロフィール、代表作が紹介されています。そして、古今東西の名探偵30人のプロファイリングと履歴書が紹介されています。
そして、パトリシア・コーンウエルの主人公ケイ・スカーペッタの食卓として作品に登場する料理を、アルポルトのオーナーシェフ片岡さんが再現しています。これが最大の読み物の一つかな?そして、もう一つの読み物、2011年上半期ベスト10です(国内、海外、そして、ランク外のお勧めも掲載されています)。私は、ジェノサイドと犯罪に挑戦してみようかな?
最後にミステリの舞台を巡るとして、ベイカー・ストリート221Bを嚆矢に13ヶ所の内外の観光案内、ミステリが紹介されています。
初心者向けですが、面白い記事満載で、この手の特集としては、よくまとまっていると思います。
著者の代表的なシリーズのひとつ、いわゆる「学生アリス」シリーズの初短編集。「あとがき」によると、このシリーズの長編は5作で完結(4作が刊行済)、短編集は本書ともう1冊を予定しているとのこと。収録作品は、著者のデビュー作を含め、計9作。既発表作品8作と本書のための書き下ろしが1作。 本書では、有栖川有栖(アリス)が英都大学に入学し、推理小説研究会(EMC)に入るところから、本シリーズのヒロイン・有馬麻里亜(マリア)がEMCに入るまでの約1年間が描かれる。収録された作品は、時系列に沿っている。そのことも含め、シリーズ全体との整合性のため、既発表作品8作には加筆訂正が施されているので、順番通りに読むことをおすすめする。
大半は、いわゆる“日常の謎”的なもの。ただ、著者のデビュー作でもある「やけた線路の上の死体」は殺人が絡む鉄道ミステリー。これまでに、鉄道ミステリーのアンソロジー『無人踏切』には収録されていたものの、著者自身の著書への収録は初めてである。
大学の推理小説研究会が舞台なだけに、「学生アリス」シリーズは全体に青春小説的な要素が強い。殺人事件が描かれる長編作品や「やけた〜」でも、同様である。それだけが要因ではないだろうが、ガチガチのミステリーファンにしてみると、少々“弱さ”を感じるかもしれない。ただ、「作家アリス」シリーズにない、ある種の“甘さ”に魅力を感じている人も少なくないだろう。 また、マリアが本格的に登場する「蕩尽に関する一考察」での、『ナイン・テイラーズ』(1998年に新訳が刊行されるまで長らく入手困難だった)のくだりなど、ある種のマニアックさと同時に時代を感じさせてくれ、何とも言えない。
書き下ろしの「除夜を歩く」の中で、江神がアリスに「お前はなんでそんなにミステリが好きなんや?」と問いかける。極めて本質的であると同時に、かなり難しい「問いかけ」である。私の場合、ミステリ全体について一言で回答するのは難しいが、本シリーズに関しては「作品に感じられる“甘さ”が好きだ」と答えるだろう。
新機軸を打ち出したソラシリーズの2作目。冒頭のエピソードが末尾のエピソードにつながり、それが3作目への布石になることを予感させるといった気配の凝った展開で、そんな目でみると、フィクションとしての完成度は至って高く、プロットは例によって小気味のいい展開というべきだろう。しかし、パラレルワールドのインパクトは第1作より弱まっており、何よりミステリーとしてのメインの仕掛けが、やや地味。シリーズ全体に関連するとおぼしき伏線が多数あるようだから、3作目以降に期待したいところだが……。
中編集のようで、長編のようでという、少々凝ったというか、風変わりな作品。 はしがきで著者が述べているように、前編と意識せずに執筆された前半の中編に続くような形で後半の中編が執筆されたということである。 そのせいか、統一感という点では物足りないものがある。 しかし、それを割り引いても、著者のミステリは完成度が高い。
本作も短めの長編といった感じで、文章も読みやすい だが、そこはクイーン信者の著者のこと、相変わらずの論理が展開される。 こういう理詰めのミステリ、最近では少なくなった。 本アリスシリーズ(火村シリーズ?)と学生アリスシリーズ、好みが分かれるところだが、それぞれに良さがある。 本シリーズには、学生アリスシリーズのミステリに淫したような論理と甘酸っぱい青春はない。 その分、本シリーズは大人の会話がアダルティーだ。
傑出した作品、という訳ではないが、このレベルの作品をコンスタントに創作できる、というのはさすがだ。 著者のミステリに大きな当たりはずれがない。 当初意図しなかったという凝った構造もまた、ミステリの遊びの一つである。 コンパクトだが、本作も安心して読めたし、楽しめた。
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