世界の情報化が進む中、暗号の重要性は益々大きくなってきている。
普段、何気なくウェブで買い物をしたりメールを送ったりしているが、これらが安全にできるのは暗号のお陰である。現在は当たり前のように使われている暗号だが、そこに至るまでには様々なドラマがあった。
上巻では、暗号の歴史が主に書かれている。カエサルから第二次世界大戦に至るまでの暗号作成者と暗号解読者の攻防がいきいきと描かれている。歴史、戦争にこれほどまで暗号が関わっていたということに驚く。
過去の歴史の中で使用されてきた暗号は種々あるが、具体的な暗号の例を一つ挙げよう。最も原始的な暗号の一つに、アルファベットのある一定分ずつずらすというものがある。例えば、dogという単語を一文字ずつ後ろにずらすと、ephという意味のない文字列に変換される。この手法で作られた暗号は素人目からしたら十分に解読不可能と感じられるが、このタイプの暗号は解読者の手に掛かれば見事に解かれてしまう。その手法に現代にも通ずるような統計学、言語学の知識が使われていたことは驚くに値する。
下巻では、現在の安全なウェブ社会を支えている暗号を実現するために最も大きな問題となる「鍵の配送問題」が中心に記述されている。
ある人が他の人に暗号を送る場合、暗号を送るだけでは正当な受信者はそれを復号できない。復号するには、「鍵」が必要で、それをある法則に従って暗号に当てはめ、解読することが必要となる。従って通信を成功されるには送信者は受信者に鍵を事前に知らせておく必要がある。
この鍵を知らせるためには、それを直接持っていく、または第三者に委託するなどの方法があるが、いずれも盗み見られたり奪われたりする危険性を免れない。またウェブ社会では相手が不特定多数になるため、一々配ったりすることもできず、この問題は大きな障害となるはずであった。しかし、これはある数学的知見により見事に解決されることとなる…。
上下巻とも非常に面白く読み応えがあるのであわせて読まれることを薦める。なお、補遺は下巻の巻末についているため、参照しながら読みたい人は上下巻をセットで買った方がよい。
とても上質なドキュメントです。「余白が足りないので驚くべき証明を書き記せない」という何とも思わせぶりなメモと、簡潔な数式で余りにも有名なフェルマーの最終定理が、とても余白などには書ききれないような膨大かつ高度な最新数学を駆使して証明される過程を素人に分かりやすく記した、小説以上にドラマティックなノンフィクションです。
ワイルズの証明の前提を成すある『予想』を提示した数学者も、ワイルズの発表前に誤った『証明』を発表した数学者も、そしてワイルズが発表後の瑕疵を解決する際に大きな役割を果たしたある『理論』を提唱した数学者も、全てが日本人であると言うこともこの真実のストーリーにのめりこむ一要素になっています。
しかし、何と言っても一番感動的なのは、砂上の栄光の後の挫折の中で一度は自ら閉じかけた解決の扉を才能が導いた閃きと共にもう一度押し開く瞬間の描写です。ここはワイルズ自身の言葉で語られていますが、もしニュートンにリンゴが落ちた瞬間の閃きの感動をインタビューしても同様の言葉が返って来るのではないかと思えるほどです。
最終章の四色問題や球体充填問題の説明は蛇足のような気がしますし、73ページ9行目の誤植は場所が場所だけに残念な気がしますが、そのような小さな欠点を補って余りある興奮と迫力が全編を貫いています。
結城浩の名作、数学青春小説(!?)の2作目、「フェルマーの最終定理」のコミカライズの第2巻。いきなり、冒頭から、ミルカさんたちの水着姿から始まるとは、ちょっと嬉しい読者サービス。
でも、こんなシーンって原作あったんだっけ?原作は読んだつもりだったんだけど、あまり印象に残っていないなぁ。しかし、それにしても、ミルカさんのスクール水着姿はインパクトありすぎ。自分の抱いていたミルカさんとはちょっと違うなぁ。
この「数学ガール」シリーズは、今のところ、最初の三作がコミカライズされているけど、どれも画を描く人が違って、それぞれかなり印象が違う。まぁ、この「フェルマーの最終定理」は、ちょっと自分のイメージとは違うんだけど、今回はその水着シーンもあり、なかなか楽しめた。でもやっぱり、数学ガールは、こういうシーンよりも、彼らが数学の難問を解いていくプロセスをどう描くかが肝心なところ。3巻に続くようなので、次回はそっちのほうも期待したい。
「僕」が憧れる美少女ミルカさん、「僕」を慕う元気少女テトラちゃんの三人で奏でる世界初の数学青春ストーリー。
小説未読。初読時は数学についての考察部分をとばし読みして三人の関係の変化を追い、二回目以降は考察部分も全て読みました。考察部分読むことでキャラの心境変化などがはっきりするなど深みが増すという、一粒で二度おいしいそんな感じ。ただし、公式とかを見ただけで眠気に襲われる人には不向きですね。各話の半分以上が数学の話題です。眠れないとき読むにはいいかもしれませんが……
「僕」はどちらの子とも数学について話すことが多く、数学とあまり縁のない私は読んでいて「こんな会話をする高校生いないよ」と思ってしまいました……。でも恋愛がちゃんとはいっているというか、本当に青春ストーリーです。「三角関係」という言葉も他の漫画などで見るのとなんか違います。
漫画のイラストはどうも筆で描かれているようで、非常に味わいのある絵です。最初のカラーページも色鉛筆のような感じですし。最近よくある「お洒落マンガ」のシャープな線や淡いトーンを多用したイラストに慣れていると、筆独特の線(しかも太め)で描かれるイラストが野暮ったく見えるかも。表紙がデザイン的な感じですから、中身を見てギャップを感じると思います。
まさに幕の内弁当のようなアルバム。 いろんな要素が何でも入ってる。 パンク、前衛音楽(?)、ドラム叩き語り、ポップソングにフラメンコまで。グダグダなライヴテイクが胸に刺さる。 途中に登場する電話での会話はスネークマンショーへのオマージュか? 特筆すべきは金剛地武志のソングライティングの素晴らしさとアコースティックギターの巧さ、そしてキラーの壊れっぷり。
何はともあれ金剛地武志が好きなら必聴。そうでない人もぜひ。
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