写楽は、世にわずか10ヶ月位しか出なかった謎の浮世絵師で、その素性に諸説があるばかりでなく、後半の作品ほど絵が下手になるという噂もあります。本書は、その風聞をふまえた、写楽が世にでて消えるまでの話です。
この小説の面白さは、写楽が誰かというより、その人物像に迫り、人間模様を絡ませながら写楽の背景にある真相を解明かしているところです。そして、写楽の板元である蔦谷重三郎を中心に、教科書に載るような、そうそうたる人物−葛飾北斎、十返舎一九、喜多川歌麿、滝沢馬琴、山東京伝など−が回りを囲んで、話が進むところにも好奇心をそそられます。この物語の中では、北斎も一九も初めは結構情けない感じで登場し、写楽も散々の世評です。その中で蔦谷重三郎の、才能ある人物を次々に発掘する目利きには驚かされます。
写楽が物語に出てくるまでが、少し冗長な気もするのですが、写楽の文字が文面に表れてからは話の筋に勢いが増し、がぜん面白くなります。それなのに、最後は哀愁を感じる余韻です。また題名の”寂しい”に意味をもたせ、読み応えある力作でした。
この作品は、本名と雅号の照し合せに、人や本や演目など名前が随分出てくるので、他の宇江佐作品にくらべ読むのに時間がかかり、作風も異なりました。写楽の知識も含め、読者を多少選ぶ本かもしれません。
他の方ほど高評価では無かったです。
面白く無いわけじゃないんですけど、1冊を通して起伏が少ないので
読んでてワクワク感や、早く続きが!みたいなのに少し欠けました。
捕物っていう側面は薄くて、
人との関わりや、恋愛模様がメインなのかな。
なので、そういうのが好きな人にはいいかなって思うのですが、物足りなさを感じました。
なんだか、個々の登場人物のキャラクターをイメージしずらかったです。
設定はちゃんとしっかりあってそれは魅力的ではあるんですが、
頭にその人像が浮かばなかったというか。
凄く読みやすいなぁとは思ったのですが、
続きを買うかは、保留中です。
男性よりも、女性に受ける作家さんだと思います。
何か、日常暮らしていて、大切なことを忘れていたな・・・
と心がじんわりなれる本です。
この本だけは捨てられません。
宇江佐さんの他の作品もいくつか読みましたが、
この本が一番好きです。
大店の息子でありながら勘当された者たち。彼らは読売り(瓦版)で生計をたてていたのだが、 銀次の口利きで何人かが家に帰ることを決心した。だが、思いがけない悲劇が起こる。彼らを 待たせすぎたことが原因だと、銀次は後悔するが・・・。泣きの銀次シリーズ3。
親子、兄弟、男と女。人と人との関わり方はいろいろあるが、そこには楽しいことばかりが あるわけではない。悲しみや苦しみに満ちているときもある。厳しい現実、そして人生。 それに立ち向かうだけの勇気や度胸があるのか?いや、勇気や度胸を持たなければならない のだ。そうしなければ、おのれでおのれを潰してしまうかもしれない・・・。銀次の娘お次も、 それを強く感じただろう。このシリーズ3では、シリーズ2からさらに年月がたっている。 銀次も50歳になろうとしている。けれど、人生の悲哀はいつの世も無くなることはない。 岡っ引きとして、夫として、そして父親として、銀次は泣く。その人間味あふれる姿は、読み手の 心を強く揺さぶる。銀次には、これからもまだまだ活躍してほしい。余韻が残る、しっとりとした 味わいのある作品だった。
父の遺した骨董店を賭け事で潰しかけた音松。
将来を誓い合った男に捨てられたお鈴。
そんな二人が寄り添って立て直した古道具屋に、ある日、浪人から一振りの刀が持ち込まれた。
調べてみると、最上大業物の名刀だった。音松は浪人に1両を融通した……。
底抜けにお人よしの夫婦が営む古道具屋を舞台にして、江戸に息づく熱い人情と心意気を、情緒豊かに描いた連作6編。
今の世の中、「人情」に触れてほっと一息つくほど救われた気持ちになる時はない。
是非、一読をお薦めする。
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