アリアが、ゆっくりしたテンポで歌われるので味わい深く、またテクストの意味がよく伝わってくる。アンネ・ゾフィー・フォン・オッターが歌う第2部 最初のアリア"He was despised"は13分を超す歌唱。フォン・オッター、ジョン・トムリンソンの歌唱は低音に魅力があり聴き応えがある。トムリンソンはバイロイト音楽祭において《神々の黄昏》のハーゲン及び《オランダ人》を歌い評価された歌手。彼の卓越した歌唱はハンス・ホッターを思わせる。
第2部 No.29「絶望と処刑"Thy rebuke hath broken His heart"」からNo.32「復活と福音のひろがり"But thou didst not leave His soul in hell"」あたりの盛り上げ方は適切。そのあと、マイケル・チャンス(カウンタテノール)が歌うNo.36"Thou art gone up on high"、アーリーン・オジェーが歌うNo.38"How beautiful are the feet"、トムリンソンが歌うNo.40"Why do the nations"への流れも良い。その流れが、第3部へも引き継がれる。No.50"O death, where is thy sting?"のチャンス(カウンタテノール)とハワード・クルーク(テノール)の二重唱も面白い。最後はオッターの"If God be for us"でしめくくる(これは普通より1オクターヴ低く歌っているようだ)。
合唱配置は、下手(左)からソプラノ、テノール、アルト(データを見るとアルトは男女混声?)、バスのようで《ハレルヤ・コーラス》と最後の《アーメン》が少し面白い。こだわり過ぎかも知れないが、独唱者が全員、英語圏出身の歌手なので英語がきれい。1988年録音。
なじみのある良い曲が、一流の演奏者が奏でているのでお得な一枚。夜のくつろぎタイムや、食事中に聞いています。バッハの曲はシリーズで買うと長いのですが、これはバラエティーに富んでいるので飽きさせません。でも全体として選曲に統一感があるので聞いてて心地よいのがいいです。これを聞いてから、結局グールドの他のバッハや、吉野直子さんのハープを買いました。バッハが大好きな人も、初心者にもオススメです。
ピノックのバッハはとにかく聴き易い。音が軽やかなのである。オーディオマニアと言えば、とかく個室に引きこもり、大音量で目くじらを立てて聴き入るということを想像される方もいるかもしれないが、ピノック好みのマニアも結構いると思われる。ある程度音量を上げてもやかましくないので、高音、中音、低音の鳴り方のチェックにピッタリなのである。
ピアノ協奏曲はやや重い。チェンバロ協奏曲はこの軽やかさが良い。ピノック盤は音の粒がさらさらと流れるような演奏ですばらしい。これは、あるようでなかなか無い。チェンバロ協奏曲は演奏者も多いが、全くしっくり来ない録音もある。ヘンデルのメサイアと並んで、ピノックのチェンバロ協奏曲はオーディオチェックにも向いている。
FM番組「HMシンジケート」のデンディング曲 ブランデンブルク協奏曲 第3番 ト長調 BWV1048 第3楽章: Allegroはこのアルバムのヴァージョンです。 番組のパーソナリティである、酒井康 氏はこの1曲が欲しい為に4枚組のボックスセットを購入したそうですが、現在は1枚のCDで聴く事が出来ます。 酒井さんのポリシーとして「番組と同じ音源が欲しければ自分で探せ」というスタンスなので、番組に問い合わせしても教えてもらえません。 私はNHK-FMで偶然オンエアされた時に、NHKに問い合わせし詳細が判明しました。 数ある ブランデンブルク協奏曲 第3番 はあらゆる演奏者・レコード会社から発売されておりますが、番組で使用されている音源はこちらになります。 クラッシックとはあまり関係ありませんが、このアルバムには20年間続いている長寿番組のエンデンング曲が収録されているのです。
この「PANORAMA」シリーズは、廉価2枚組で初心者にも聴きやすく、しかもよくある「名曲集」とは違い、抜粋ではなく全曲をきちんと収録していて、ある程度聴きこんだリスナーにも納得の内容で、大変おすすめです。
個人的には、ロマン派以降で個々の曲を買うほど関心がない作曲家の作品には、多くの発見がありました。
ただ、この「バッハ1」については、演奏があまり初心者向けとはいえません。
演奏者のゲーベルとムジカ・アンティクワ・ケルンは以前からの大ファンで、ビーバーのソナタ集、バッハのフーガの技法なども聴いていますが、さすがにこの演奏は速過ぎ、やりすぎのように思います。聴いている方もセカセカしてきそうです。
古楽系の演奏を聴いたことのない方が、いきなりこれを聴いて「古楽はがさつで繊細さがない」というイメージを持ってしまわないか、少々心配です。
古楽系でも、レオンハルト やコープマン などはもっと普通の速さで演奏しているので、これらの方がおすすめです。
また同じMAKのバッハでも、管弦楽組曲2番などは大変な名演で、大好きなだけに、ブランデンブルク協奏曲は、どうしてこうなった、と不思議です。
他の古楽器演奏を聴いたことのある方なら、こういうのもあり、過激、と楽しめますが、同曲を初めて聴く、古楽器による演奏を初めて聴く方には、あまりおすすめできません。
入門者を対象にしたこのシリーズには、あまりふさわしくない演奏というのが正直なところです。
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