以前に中学校のクラス合唱で聞いた、「翔る川」という曲を探していて、ついに見つけました。 他の曲もよかったです。
批評家などにもあまり採り上げられる事はないようですが、“華岡青洲の妻”は、増村保造監督作品の中でも、かなり完成度の高い逸品だと思います。
まずなんと言っても配役が完璧です。 高峰秀子は、美しいけど気丈で、むしろ男っぽい性格の女をやらせれば天下一品の女優さん。 対する若尾文子は大人しく従順そうな顔をしていながら、その内側には、燃えるような情念をたぎらせている女がなんと言ってもはまり役。 この二人が嫁・姑対決を演じるのですから面白くならないはずがない! どちらか一方の女優さんが画面手前にいるときの、後方にいるもう一方の女優さんの視線を見てください。 すごい怖さです。 この辺の演出がまさに増村監督の真骨頂。
一つ難を言えば、妻・加恵がなぜ姑をあれほどまでに憎みだしたのかの説明が、すこーし弱いような気がします。 このへんは原作を読んでいないので映画版でどういう処理がなされたのかわかりませんがー。 とは言え、独特の凄みがあるんだけど、いつもどこかチープな雰囲気が出てくる増村作品の中では、美術、演技陣も充実していて重厚な感じが強く、断然お勧めの作品に仕上がっています。
製作時期を見たところ、小説が書かれて間もない、80年代末期から90年代初頭のころの作品でした。小説の書かれた時期とほぼ重なる時期の日本の町の様子がリアルタイムで映像化されているという感じです。
長い作品を映画にするとき、時間の枠があって、どうしても削除せざるを得ない部分があると思うのですが、この映画では、たとえ短くても、原作のエピソードを出来る限り入れようとしている意識がとても感じられます。原作を読んでいたら、「あ、この部分は、原作のあの部分を意識しているなあ。」ということに気づくところがたくさんありました。原作を読んでいなくても、何の違和感もなく、ストーリーの流れについていけます。
私たちが作品を鑑賞するとき、舞台となる時期を想像しながら鑑賞すると思いますが、映像を通してみていると、ファッションなど、「現在からの想像」では届かない当時の雰囲気がとてもよく伝わってきました。
白河まりあ役の中嶋朋子さんの淡々とした美しいナレーションと共に、静かに進んでゆく物語が、美しい映像を通して自然に心にしみこんできました。つぐみ役の牧瀬里穂さんもかわいらしいし、陽子ちゃん役の白鳥靖代さんの柔和な表情もとても魅力的です。80年代末期から90年代初頭の雰囲気を味わいたいとき、ノスタルジックで穏やかな気分になりたいとき、にお勧めです!
とても16歳とは思えない堂々たる演技! 当時のドイツにおける日本認識の程度も分かって、歴史の勉強にもなります。
家族八景とエディプスの恋人もNHKに実写で創っていただきたい
NHKなれぼこそこれをするべきだと思う
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