長編ですが、楽しくてあっという間に読めること請け合いです。植民地であった月世界が地球から独立する話で、いかにもアメリカ人の独立の意気あふれる元気いっぱいの作品。 社会とは何か、政府とは何か、自由取引とは、自己責任とは、そして自由とは、、、「小さな政府」など現時点いろんなテーマを原点にもどって考えさせられるテキストにもなっています。”there ain’t free lunch”というのは特に気に入ってます。登場人物がマイクを含めみんな生き生きして、特にワイオミング・ノットの“why not?”は最高。 あと、解説も良いです。
これは、おもしろかった。この本はとにかく読みやすい。SFに身構えてる人でも難なくその物語世界に入っていける。そして特筆すべきは、本書の主人公がこういったスペース・オペラにありがちなヒーローに描かれているのではなく、心に傷を負ったアンチ・ヒーローとして描かれている点だろう。
彼は、賭けに勝った。イチかバチかの賭けに勝って巨万の富を手に入れた。しかし帰還後、彼は精神科医のもとを訪ねることになる。本書はそんな彼と精神科医の対話のパートと、彼がゲイトウェイからの旅立ちによって成功するまでの物語が交互に語られることになる。
心に傷を負ったがゆえに、そして人間としての弱みをみせるがゆえに彼はヒーローになりえてない。むしろ、痛々しい。しかし、それでも本書はおもしろい。人間的な弱さをみせられることによって、物語に真実味が加わるのだ。
本書はシリーズ化されている。巻をおうごとに謎に包まれたヒーチー人の全貌が明らかにされるようである。
とりもなおさず、SFの各賞を総ナメにした本書は著者フレデリック・ポールの代表作であり、SFを語る上ではずすことのできない傑作なのは間違いない。オススメです。
イヤー驚きました!アナログ版をCDRに落して聞いてましたが、まさかCD化されるとは!高校生のときに大ファンだったのですが、とうとうテレビでは一度も観ることはありませんでした。「ロマンティクしましょう」は当時、全農のCMソング(本人出演)でそのCMを観たいが為に時間をチェックしていたのを覚えています。「ナイトトレイン~」はパンジー主演「夏の秘密」と言う映画のエンディングでした。20年位前にテレビ放映がありましたがビデオ化はされていません(泣)真鍋は歌手引退?後、雑誌CANCANの専属モデルをしていた事を知っている人はあまり居ません。今は何をしているのでしょうか~。とにかく万歳!真鍋ちえみよ永遠に!
幕末から維新という激動の時代を舞台に、波瀾と創造性に満ちた壮大で魅力的なストーリーが展開されます。 SFというほど破天荒なものではありません。モンテクリスト伯や宝島のような物語のなかに、里見八犬伝や真田十勇士といった忍術・妖術ものの要素が組み込まれているという意味ではSFなのでしょう。 著者(故人)が海外SFの翻訳をしてきた過程で身に着けた小説を書く上での魅力的な要素をふんだんに盛り込んで、SFではなく歴史ものとして結実させた結果、これほどの作品が完成したのだと思います。 自分の場合、初めて読んだときの年齢が若かったこともありますが、読み進んでいくにつれて、歴史の陰に本当にこういったことがあったのではないかと錯覚しそうになるほど、物語世界にのめり込んでいけます。とにかく純粋に面白い小説です。時代考証もしっかりしており、快作と言っていいでしょう。 かつて故・星新一氏も「日本人によって書かれた冒険小説のベスト・ファイブに入れていい傑作」と述べていますが、幅広い年齢層に渡って一読の価値がある小説だと思います。
巻末の訳者後記を読むと、1959年当時の日本人の反戦ヒステリー度合いが想像以上だったことがよく分かります。敗戦して20年足らず、アメリカからの思想教育を徹底的にたたき込まれ、過剰に順応してしまう日本人の姿に、やや哀れさを感じてしまいます。それだけ太平洋戦争で完膚なきまでに打ちのめされたことがよほどのトラウマだったのでしょう。2010年現在、分別ある大人が読めば、戦争賛美云々は取るに足らないディテールであることは同意していただけるでしょう。
読み手の年齢により受け取るテーマが異なる作品は老若男女が楽しめる名作と言えますが、本書のすばらしい点は読む時代も選ばないという点ではないでしょうか。私は40歳を過ぎてはじめて本書を読みましたが、さまざまな後年のネタ元になったというだけでなく、得るものがありました。私の場合は恩師デュボア先生との禅問答的な授業と軍隊における組織論でした。
授業の中でマルクス論に触れるところがあるのですが、「資本論」を何十年か前に頭に詰め込んだ世代の方には暴論、稚拙と冷ややかな反応でしたが、リーマンショック後の今本書を読むと「市場価値」は絵空事だ、と言い切るデュボア先生が今の経済状況を予言して見事に言い当てていることに驚嘆してしまいます。(実際金融工学による市場価値は一夜にして絵空事になってしまいました)また、入隊後は軍隊の組織構造について多くのページが割かれていますが、その中で組織の中での仕官(マネージャー)の必要数についても言及されています。出典は定かではありませんが、必要な任務を満たすための仕官の比率は5%という記述があります。過去における多くの軍隊は総数の10〜20%が士官として配属されていた軍隊は負けるために組織された軍隊みたいなものだという論理は、そのまま現代の赤字に苦しむ日本の大企業に当てはまり、組織とマネージャーと知的労働者の比率に共通するのではと思いました。
とにもかくにも時代を超えた快作であることは間違いありません。
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