自分が見たい芝居を作るために「プロデューサ―の仕事は雑用」であるといい切り、
脚本から演出家、出演者、スタッフ、劇場手配、ポスターやパンフそしてPRまで
全てをこなすス―パーウーマン北村明子。夢の遊眠社やシス・カンパニーで日本の
演劇界をリードしてきたその秘密が明かされる。
この本を読んだらやっぱり彼女のプロデュースする芝居が見たくなること請け合い。
もたれ合いや甘えを拝したプロの芝居経営者の姿がここにある。
この本を読んで、日本の映画料金と興行収入の関係性が非常によくわかった。他力本願(ハリウッドやテレビ局、外部製作会社頼り)の映画興行界が努力を怠り、値上げで帳尻を合わせており、それもそろそろ限界に来つつあることを。 考えてみれば、映画そのものもそうだが、トーキー、カラー、ワイドスクリーン、ステレオ音響、シネコン、3Dなど全てアメリカからの輸入サービスである。映画興業史上、日本で生み出された画期的なサービスはない(まるで今のIT業界のサービスみたいだが)。 この著者のような数字を基調としたアプローチは貴重である。今後も同様の書籍をどんどん著して欲しい。
ミニシアター、 アート系作品が好きで同書を手に取りました。
作品タイトルは 「映画館のつくり方」となっていますが、 いわゆるシネコンでなく、街にひっそりと たたずむミニシアターの作られた経緯と 現状について、地方を代表する映画館の 館主やスタッフの話を中心にまとめられています。
いずれも共通しているのは、 「東京で見れたアート系作品が 地方に行くと見れない。だったら 自分が映画館を作って見れるようにしよう」
そんな熱い思いに動かされ、 地元の寄付金で映画館を作ってみたり、 NPO法人化して映画館を作ってみたり、といった作り方と いざ作ってみてから軌道に乗せるまでの苦労が赤裸々に描かれています。
私は以前名古屋に在住していたとき、 「東京でしか上映されない単館作品が多すぎる」と 同じような忸怩たる思いを抱く人間の一人でした。
しかし 今著に掲載されている今池シネマテークスタッフの発言によると、 「名古屋は他の地方と異なりアート系作品を上映する映画館が 多すぎるという別の問題もある」との発言。それが事実だとすると 他の地方は、もっと映画を観る環境が厳しいといえるわけで、薄ら寒い思いすらします。
映画は文化であり、 行政が援助せずに、 すべて民間に任せる なんて考えられないと あるフランス映画関係者は言いいます。
現在の日本の映画環境の 問題点の一片が垣間見え 考えさせられる珠玉の1冊です。
深みのある優しい色彩と生き生きとした描写がとにかくすてきです。女の子のねずみの世界への冒険が楽しく描かれているというだけでなく、犬との関係をもちゃんと築いていくという夢と勇気の両方をもらえるお話で、読後感がとてもよかった。どんなにすてきな場所へ入場するのか、タイトルからわくわくします。
私自身時々エンタメ系の文章も翻訳する翻訳者ですが、とても面白く読めました。
本書で触れられている問題の一部は翻訳業界全体でおきていることでもあるので、これから翻訳者を目指す方にとって次の3点が特に有益だと思います。
- 産業翻訳と字幕翻訳がどれくらい違うものであるのか - 翻訳を知らない人(クライアント)と働くということがどういうことなのか - 日本語力、常識力の低下によって生まれる訳文への制約があるということ
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